本記事は、映画「アルカディア」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。
鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。
アルカディア
2017年、ジャスティン・ベンソン、アーロン・ムーアヘッドの両監督によって制作された作品。
同じ時間をループし続ける地域から脱出しようとする数奇な兄弟の物語。
上映時間は111分。
あらすじ
舞台はアメリカ、アーロンとジャスティンの兄弟の元へ、一本のビデオテープが届く。
その内容は、昔二人が所属していたカルト教団のメンバーが集団自殺を行う映像だった。
二人は真相を解明するために、教団の元へ行くが…。
出演役者
本作の主人公、兄のアーロンを演じるのか「アーロン・ムーアヘッド」
もう一人の主人公、弟のジャスティンを演じるのが「ジャスティン・ベンソン」
本作の二人の主人公はなんと監督自身で、自分の名前をキャラクターに充てて演じている。
ネタバレ感想と考察
とにかく謎が多いまま…。
今回の映画で数ある映画のプロットから選ばれた内容、それは「同じ時間を繰り返す」という内容だった。
どこかにこんなプロットの作品もあったような気がするのだが…。
脚本としてはとても面白く秀逸に描かれてはいたものの、如何せん「謎が多すぎる」まま終わってしまうのが、自分含め、鑑賞者皆さんの見解でもあるだろう…。
教団が崇める空の「化け物」とは一体何だったのか?
教団の目的は一体何だったのか?
筆者も数々のブログを読んでみたが、全てが謎のままであり、「考察」の範疇を超えることはできない映画だった…。
さてさて、「化け物」の正体はわからないにしても、これだけは確実に言えることがある。
それは「ループする現象」を引き起こしているのがこの「化け物」の存在なのだということ。
カルト教団や、アルカディア地域の周りの人間にはもれなくこの「ループ現象」が起こっていたが、そんなループからの脱出こそが本作のプロットだった。
化け物がアーロンとジャスティンに「映像」や「写真」を見せていた理由までもがわからないが、ここで最有力として考えられるのがやはり「二人をおびき寄せるため」であると考えられる。
そんな謎の存在を謎のまま終わりにさせることも映画の醍醐味なのだろうか??
この「謎の多さ」はやはり感じ取ってしまう鑑賞者も多く、日本の「firmarks(フィルマークス)」では「3.1」となんとも言えない評価であり、アメリカの映画サイト「Rotten Tomatoes(ロッテン・トマト)」では62%と、こちらでも言葉に詰まる評価となった。
最後に、一番の謎がある。
それは、幼い頃から教団に属していた二人は何故ループせずに成長したのか?ということだろう…。
ここまできてはもうお手上げ…鑑賞者に色々と考察を委ねるような作品と腹を括るのが懸命だろう。
まさかの二部構成!?意外にも壮大な続編映画!!
2017年に公開されたこの映画、実は二部構成の作品の後編であることは皆さんは知っていただろうか?
前作はなんと2012年に「キャビン・イン・ザ・ウッズ」というタイトルで公開されているのだ。
こちらの作品は本作「アルカディア」に登場するマイクとクリスという二人の男性の物語で、薬物中毒のクリスを薬物から克服させるために動くクリスの物語である。
こちらの「キャビン・イン・ザ・ウッズ」では一軒の小屋の中で物語が進行していくが、今回の「アルカディア」で、その小屋で時間をループするマイクとクリスが登場している。
ここまでを紐解いてみると、今作の「アルカディア」は前作「キャビン・イン・ザ・ウッズ」をより際立たせるための作品としても鑑賞することができる。
時系列的に鑑賞すれば、前作を鑑賞した後に本作を鑑賞することとなるが、その順番の鑑賞方法の方が「キャビン・イン・ザ・ウッズ」の感動は大きいだろう。
前作ではわからなかった「謎現象」の数々が、本作で「アハ体験」の渦に巻き込んでくれる魅力があるのだ。
何よりも、この「キャビン・イン・ザ・ウッズ」もまた単品で鑑賞すれば、鑑賞者を惑わせるような作風なのだから…。
どちらにせよ、この二本は是非ともセットで鑑賞してほしい。
面白さが必ず倍増する脚本となっている。
余談ではあるが、写真の通り、ヤク中のクリスには「左手」に手錠がはめられているが、「キャビン・イン・ザ・ウッズ」でのクリスは「右手」に手錠がはめられている。
この辺の演出の甘さも低評価に繋がってしまっているのだろう…。
「低予算映画」として作られていた!?
色々とこの作品を調べてみると、どうやら「低予算映画」としての一面があるようだ。
その要因としては、何よりも二人の監督自身が物語の主人公として映画に出演していることが何よりも驚きだった。
ただでさえ、登場キャラクターが少ないこの作品で、そんなキャラクター二人を監督自身が演じていることも、本作が低予算映画である所以となっている。
正直なところ、二人の演技に関して言えば、あまり期待はできないような描写も多い。
本職が「監督」であり、「演技」にはあまり定評の無い役者であったのだろうか…。
それでも、二人の監督自ら「主人公」を演じる根性には拍手を送りたい。
ちなみにではあるが、前作「キャビン・イン・ザ・ウッズ」でも、メガホンを取るのはこの二人の監督だ。
こちらでは監督は出演せず、しっかりとした役者が起用されている。
漏れなくこちらも「低予算映画」としての立ち位置を確立しており、登場キャラクターはエキストラも含めてせいぜい5〜6人程度であり、舞台となる場所も主に「一つの小屋の中」という徹底ぶりとなっていた。
一作目が2012年、そして本作が2017年であることを考えると、「元々二部構成の脚本を描いていたが、資金の都合上、制作が難航した」とも考えられる。
そう考えると、主人公を演じた二人の監督の姿があるのも頷ける。
また、そんな低予算を垣間見てか、撮影方法や音響関係にはずいぶんと力を入れているようで、不思議なカットや雰囲気を際立たせるBGMが挿入されている。
これは両監督の計らいで、洋画ドラマシリーズの「Homecoming」や「Lost」などを参考に、不安と緊張を与える撮影方法や音楽が使われているようだ。