本記事は、映画「TWO」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。
鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。
TWO
2021年、マル・タルガローナ監督によって制作されたスペイン映画。
お腹の皮膚を縫合された一組の男女の物語。
上映時間は70分。
あらすじ
舞台はスペイン、目が覚めたサラは自分の真下に知らない男性が居るのに気がつく。
お互い裸であった2人はパニックとなり離れようとするが、離れようと動くと腹部に激痛が走る。
おそるおそる腹部を見てみると…なんとお互いの皮膚が縫合されているのだった…。
出演役者
本作の主人公サラを演じるのが、「マリナ・ガテル」
スペイン、バルセロナ出身の女優。
スペインの映画作品にぽつぽつと出演しているようだ。
もう一人の主人公、ダビドを演じるのが「パブロ・デルキ」
スペイン出身の中年俳優。
本作以外では「盲目」を題材としたスリラー作品、「ロスト・アイズ」に出演している。
配信コンテンツ
本作は今現在、Netflix、等で配信されている。
ネタバレあらすじ
- ネタバレあらすじを読む
- 舞台はどこかのホテルの中。ベッドの上で一人の女性、サラが目覚める。
サラは起きてすぐに、自分の真下に一人の人間が居るのに気がつく。
よくよく見てみるとそれは知らない男性で、お互いに裸の状態であったことからサラはパニックに陥る。
上から降りようとしたその瞬間、腹部に激痛が走る。
その激痛は男性にも伝わったようで、男性も目を覚ます。
なんと2人は腹部が縫合されているのだった…。
2人はとりあえず横になり、お互いの情報を交換しようとする。
女は「サラ」
33歳の専業主婦であり、「夫と約束があり、家を出た」ところまで覚え、気がついたらこの部屋に来ていたということだった。
一方の男は「ダビド」
38歳の中年男性であり、彼女とのデート中であると語る。
お互い全く知らない人間であった2人だが、寒いと語るサラに手を当てようとするダビドだが、それは拒否されてしまう。
その時、サラはあることに気がつく。それは「壁に全く同じ絵が2枚飾られていること」であった。
そのまま周りの状況を確認してみる。
お互いに衣服や時計、携帯電話などのモノは全て取り除かれている。
そしてサラの耳には何故か、知らないイヤリングが装着されていた。
ベッドから離れた場所に固定電話が置いてあるのを発見した2人は、何とか電話までたどり着こうともがいてみる。
ダビドはサラを抱えて起き上がってみるが、なかなか上手く動くことができない。
サラの足がもつれたことによって、その場で2人とも転倒してしまうのだった。
「力が出ない」と叫ぶサラであるが、ダビドのサポートによってなんとか机までたどり着く。
とりあえず水分を摂取し、色々と部屋を動き回り叫ぶが、もちろん返事は帰ってこない。
そして2人は、尿意を催してしまう。
高級ホテルのように整えられたトイレであったが、そこにサラが座ると、必然的にダビドは上に乗るしかない。
そしてお互いに用を足すのだった。
ダビドが用を足すと、そこで初めてサラが吹き出すように笑みを浮かべる。
「あなたの帰りを待つ人は?」とサラが尋ね、「犬のゴールディだ」とダビドが答えると二人は囁かな笑みを浮かべるのだった。
その時、部屋の電気が急に消えて真っ暗となる。
その間、部屋では物音が鳴り続け、それは「第三者」が部屋に居ることを意味するのだった。
電気が再びつくと、洗面台に薬が置いてある。
「鎮痛剤」だった。
ダビドは気持ち悪がり飲まないが、サラはこれを飲むのだった。
2人は部屋に戻り、今度は電話の受話器を取ってみる。
しかしどこにも繋がらない。
電話の机の引き出しを開けてみると、そこには「二冊の聖書」と知らない「リタ」という女性の写真が出てくるのだった。
今度は「二枚の絵画」を調べてみる。
絵の裏を見ると、壁に「監視カメラ」が埋め込まれているのを発見するのだった。
その時、突然電話が鳴り出す。
急いで電話の元へ行きサラが受話器を取ると、電話の向こうでは軽快な音楽が流れるのだった。
思わず動きが止まるサラ。
その音楽はサラの夫の「マリオ」が好きな曲だった。
マリオは科学と哲学の教授としての立ち位置であり、「数字の研究がライフワーク」と語るサラ。
「2」という数字に支配され、サラの浮気を疑ったマリオの仕業とサラは考えるのだった。
そしてダビドも、その違和感のある容姿からサラからの質問を受ける。
筋肉質な体、真冬なのに日焼けした肌…。
そしてダビドも本当の仕事を話す。
彼は「男娼」だった。
サラは「夫の犯人説」持ち、ダビドは「アンダーグラウンドの職歴」を持つ。
お互いが相手を攻め、仲違いを起こすダビドとサラであったが、喧嘩をしながらも協力して脱出を目指していく。
喧嘩にも疲れ、途方に暮れた2人はそこでそっとキスをする。
その時、またまた電気が消されてしまう。
電気がつくと、2人は接合部の糸を切る決心をする。
「刃物」が置かれていなかった部屋であったが、ダビドが鏡を割り、その破片を使って紐を縫い糸を切ろうとする。
しかし、サラはとんでもないことに気がついてしまう。
それは「2人の肌が切除され、縫合されていること」であった。
途方に暮れた2人はベッドに戻る。
そしてダビドは2日前のとある出来事を思い出す。
ダビドは2日前、とある男から「妻と寝てくれ」と頼まれていた。
その依頼者の男がサラの夫であると2人は考えるのだった。
暫くするとまた電話が鳴る。
サラが受話器を取ると「やあ、部屋は気に入ったかな?」と初めて犯人の声を聞く。
しかし、その声はマリオには別人のものであった。
再び心当たりは無いか、2人は記憶を手繰り寄せる。
しかし、思い当たる節はひとつも無かった。
2人は半ば諦め顔で、「2人の血液型」を気にし始めてしまう。
そして、2人は偶然にも「誰にでも分け与えられる血」を持っているのだった。
またまた電気が消されて、犯人が入り、そして出ていく。
2人はの前には、箱に入った食事が置かれていた。
一人で食事を頬張るダビドに、サラはまた仕事のことについて質問を投げかける。
ダビドの法に触れる仕事の内容に幻滅し、ダビドを糾弾するが、諭すようにダビドは、無理やりキスをする。
そしてサラはそれを受け入れる他無かった…。
その時、再び電気が消える。
そこでサラは気がつく。
「2人がキスをするタイミングで電気が消えていること」に…。
そこで2人は、欲望のままにキスを繰り返す。
そしてベッドに横になり激しく抱き合う。
すると犯人が部屋に入ってくる。
「もういい!」や「たくさんだ!」と近寄る犯人にダビドが蹴りを入れると、家具に頭をぶつけ、気絶してしまう。
そこで2人は初めて扉の外に出る。
扉の外の通路には、数々の記事や写真が貼り付けられていた。
そしてその中から、とある昔の新聞記事を見つけ、その内容を見て2人ははっとする…。
新聞記事の内容は「若い母が男女の結合双生児を出産」というものだった。
そして父親は「妄想型統合失調症」とも記述されていた。
その記事を見てサラが告白する。
「実は年齢を偽っていた。」
彼女の本当の年齢はダビドと同じ38歳、そして「5月4日で38歳になる。」と言う。
そしてダビドの誕生日も5月4日であると言う。
2人は出産時に生き別れた結合双生児だった…。
最後の力を振り絞って、2人は通路を進んでいく。
すると、怪しい研究所にたどり着く。
無数の檻の中に動物が軟禁されていたが、そのほとんどの動物が「結合」されているのだった。
その時、後ろから犯人の男が追いかけてくる。
「『2』が全ての鍵だ。」と語る犯人は、2人の実の父親となる人物だった。
父親は、これまでにありとあらゆる「結合双生児」の研究を続けていたと話す。
そして再び2人を結合したと話す。
銃を構えるサラだったが、揉み合いになった時に銃が暴発し、ダビドと父親に命中してしまう。
サラはダビドを救うために、ペーパーナイフで無理やり結合を解き、外へ出ていく。
しかし、外は大雪となっていた…。
全裸で研究所を抜け出すサラであったが、寒さと痛みでどんどん衰弱していく。
一方のダビドも銃傷から失血し、衰弱していく…。
2人は横になり、悶え続ける…。
ネタバレ感想と考察
斬新すぎるプロットと日本での評価。
本作はスペインで制作されたシチュエーションスリラー作品であるが、映画としてのその長さは「70分」と決して長い方では無かった。
基本的に2人の人間が密室からの脱出を目指すプロットは「SAW」の一作目を連想する人も多かっただろう。
スリラー作品としての今作の最も注目すべき点といえば、やはり「結合されている」という一点だろう。
全く知らない2人が裸の状態で離れられないという恐怖は、想像に耐えかねる恐怖となった…。
(もしこれが2人とも男と考えると更におぞましい…。)
映画サイト「firmarks(フィルマークス)」の評価を見てみると、評価は「2.4」と低く、そのおぞましさや気持ち悪さ、そして脚本の荒さに言及するコメントが多かった作品であったが、脚本自体には面白みを見出し、高評価を評す人もぽつらぽつらと居たようだ…。
前述した「SAW」の一作目でもそうであるが、この「結合される」というプロットによって生まれる作風の特徴は、「2人の会話劇」がメインとなることだろう。
今作のシチュエーションスリラーにおいてのこのプロットは、脱出するための「アクション要素」よりも重要なものとなっていたのだ。
最初は見ず知らずの2人であり、共通点も全く無い。
会話からもその糸口が掴めず、ヒントが少ないために、結末を予想することが困難だったのではないだろうか?
結果、2人は「結合双生児」であったというオチとなり、マッドサイエンティストな父親が犯人となる結末だったが、結末がわかって
初めて、これら全ての会話が生きてくる。
作中で語られる2人の境遇、部屋に置いてある道具の数々、そしてタイトル…
最初はなんの関連性も無かった、全ての点が線となるこの手法に関して言えば、見事と言ってもいい。
しかしながら、この会話劇からのラストを描くに当たって、非常に残念な要素があるのも否めない…。
惜しい…「伏線回収」とならなかった要因…!!
会話劇から伏線を張って…それを結末で回収する衝撃のラスト展開が期待できる作品であるが、「ひとつの欠陥」によってこれが「伏線回収」となり得ていないのが残念な要素でもあった。
それが「嘘をついている」という点だった。
ダビドとサラ、本当は38歳という同年齢であるにも関わらず、物語終盤までサラが「33歳」という嘘をついているのだ。
鑑賞者目線、こればかりは予想することなど不可能であり、この段階で「もしかして…結合双生児では!?」という予想が立てられなかったのが勿体ない…。
真実を述べるサラの言葉を聞いて「今更!?」と感じた人たちも多かったことだろう…。
更に言えば、今回の「犯人」として描かれるマッドサイエンティストの父であるが、彼もまた「サラの夫のコスプレ」をしているのがなかなかにシュールな要素だ。笑
ダビド、サラ、二人共に「サラの夫マリオ」を匂わせる風貌で近づき、挙句の果てには電話越しに「マリオの好きな曲」を流す始末。
映画内の登場人物達が「オチを予想させまい!」と動いている姿は、逆に違和感に私たちの目に映ってしまった…。
実在した兄弟!?「ブンカー兄弟」
「衝撃のラスト」を飾るに相応しい「結合双生児」というオチであるが、元々2人が結合双生児として生まれたことと、父親が「妄想型統合失調症」であったことが原因となっていた。
それは「人間の双生児」に限らず、全ての動物において「2」という数字に支配された父親であったが、彼も作中で語る「ブンカー兄弟」という双生児については実在した本物の人たちである。
ブンカー兄弟は1811年にタイで生まれた結合双生児であり、結合双生児としては長寿である62歳まで生きたという点から、世界規模で有名な双生児となった。
そしてなんと、子供まで授かるほどに人生を謳歌した双生児としても有名で、こちらのチャン&エンはそれぞれ姉妹の女性と結婚し、それぞれ10人と11人の子供をもうけていたことがこれまた衝撃となった…。
(言わずもがな『性生活』は気になることだろう…。)
そしてもうひとつ、このブンカー兄弟の特質すべき点が「フリークパレード巡業」を生業としていたことだ。
自ら進んで「見世物」として働き、メディアにも露見し収入を得ていたことには、彼らのたくましさを感じざるを得ない…。
最も、「仕方なく」この仕事をしていたことも充分に考えられるし、そうであると思っているが…。
本作「TWO」では、映画のエンディングの際、このブンカー兄弟と「ヒルトン姉妹」という結合双生児の姉妹の写真が数多く流れている。
実はまだある!?双生児と脚本の仕掛け…。
また、今作で「結合」された部位はダビドの左半身とサラの右半身であったが、ブンカー兄弟は、実は「真正面」から結合されて生まれてきた。
ブンカー兄弟の実際の写真を見てみると、2人共に正面を向けることから「伸縮性のある肌であった」とのことから写真撮影が可能だったようだ。
もしかしたら、本作のダビドとサラが半身を結合された脚本の背景には、「2人を正面から撮れるカメラの画角」を意図した脚本だったのかもしれない…。
そしてこの実在した結合双生児達…。
例外なく「片方が亡くなると、もう片方も亡くなる。」という運命にあるようだ。
ブンカー兄弟も、チャンの死から3時間後にエンも亡くなっている…。
そして本作のラスト、結合を切り離せたにも関わらず、2人はそれぞれ別の死因で亡くなったようなラストが描かれる。
これも実在する結合双生児の運命を模してのことなのかもしれない…。