本記事は、映画「THE GUILTY/ギルティ」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。
鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。
「THE GUILTY/ギルティ」
2019年、グスタフ・モーラー監督によって制作された作品。
警察の緊急オペレートによって事件解決を目指す、ワンシチュエーションサスペンス。
上映時間は88分。
あらすじ
舞台はとある警察署。
主人公のアスガーはしがない警官で、緊急ダイヤルの担当を仕事としていた。
元々別の部署から来たばかりのアスガーは
その仕事の退屈さにストレスを感じす日々を送っていた。
ある日、いつものように電話番をしていると、助けを求める女性からのコールを対応することとなる…。
出演役者
主人公のアスガーを演じるのが、「ヤコブ・セーダーグレン」
ワンシチュエーションの作品であり、主となる登場人物は彼だけとなり、他の役者は殆どが声だけの出演である。
配信コンテンツ
「THE GUILTY/ギルティ」は今現在、Amazonプライム、U-NEXT、Hulu、等で配信されている。
ネタバレ感想と考察
キーとなるのは「電話」…頭脳系シチュエーションスリラー!!
「ワンシチュエーションサスペンス」
そんなジャンルの映画は一定数のマニアであれば大変好みな作風であるが、そんな本作も漏れなく期待通りのワンシチュエーションで展開されていく。
今回のキーとなるツール、それが「通話」によって解明されていく作風だろう。
「密室からの脱出」が多く描かれる他のワンシチュエーション作品では、登場人物のアクションがメインとなるのに対して、今作では「会話」がベースとなる作品となっていた。
電話の相手の声でイメージを作り上げ、そんな「音」や「声」から相手の環境を想像していく面白さがこの作品にはある。
そして、音のみの情報によって加害者や被害者の関係性を勘違いさせる演出がとても上手な伏線として機能し、最後のどんでん返しでは、それが非常に上手く機能したオチとなっていた。
(実は息子オスカーを殺したのは精神病のイーベンだった。)
そしてそんなイーベンを宥めながらも、「何かをしたいのにどうすることもできない…」
そんな主人公の葛藤を描くのが非常に上手な作品となっていた。
「ラジオドラマ」としても成り立つ作品!?
「音」だけによって物語が進行するこの作品であるが、お気づきの方もいるだろうか…?
実はこの作品、「映像」を見なくても物語が理解できてしまうのだ。
普段、映画を字幕鑑賞している人は、設定から音声を「日本語吹き替え」にしてみるといい。
あとは目を瞑っていても物語が理解できることに驚くはずだ。
今では少なくなってしまったカルチャーとして「ラジオドラマ」というものがあるが、作品のベクトルとしてはこれに非常に近い一面も持ち合わせた作品となっていた。
語られない主人公の境遇とは…!?
どっからどう見ても、仕事に対してのやる気を感じさせない主人公アスガーであるが、彼は一体どんな境遇でこの仕事に就いていたのだろうか??
映画が始まって序盤でわかる境遇としては、まずこの、「アスガー」がこの業務の新人であることだろう。
隣の席の仕事仲間に技術的な質問を投げかけていることからもこれはわかる。
彼は「別の部署から移動してきた」ことがわかるわけであるが、その内容も徐々に明らかになり、最後のシーンで回収されることとなる。
彼は「犯罪者を銃殺してしまった麻薬取締官」であり、その裁判の真っ最中であるというオチだ。
思えばそんな彼の境遇を匂わす「法廷」や「裁判」などの単語や、「前の部署の仕事仲間との会話」も伏線として張られ、その内容からもアスガーが「麻薬取締官」であることがわかる描写もあった。
また、「電話番」を満足としない彼の仕事に対してのモチベーションは、以前のアクティブな警官業務を彷彿とさせるような人間性も滲み出ていた。
どこか「物足りなさ」を感じるようなヤコブの名演にも注目の作品だろう。