「イット・カムズ・アット・ナイト」のネタバレ感想と考察【一軒の家内で蔓延る謎の感染…】

  • 2021年6月26日
  • 映画
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本記事は、映画「イット・カムズ・アット・ナイト」のネタバレを含んだ感想と考察記事です。

鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。

イット・カムズ・アット・ナイト

2017年、トレイ・エドワード・シュルツ監督によって製作されたアメリカ映画。

謎の病原体から身を守るべく奮起する家族を描いたホラー作品。

上映時間は91分。

 

あらすじ

舞台はとある森の中の一軒家、未知の病原体によって浸食されてしまった世界で、生き残る人間はどんどん減少していった。

そんな中でも、森の中で一軒家を構えるポールの一家は、生活に数々の制限をかけて何とか生き残っているのだった。

そんなある日、ポールの家に一人の男が忍び込んでくる…。

ウィルと名乗る彼自身もまた、家族を守るために逃げてきたのであった…。

出演役者

本作の主人公、一家の主ポールを演じるのが「ジョエル・エドガートン

1996年より、数々の映画作品にキャスティングされるようになった俳優で、主にホラーやサスペンス作品に出演している。

「ギフト」を始めとしたB級ホラーへの出演が多い中、過去には「スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃」にも出演している。

俳優としてのブレイクのきっかけはこれが影響しているだろう。

 

ポールの妻であるサラを演じるのが「カルメン・イジョゴ

イギリス出身の女優であり、あの「アベンジャーズ」「ファンタスティックビースト」シリーズといった有名作品に出演している。

 

ポールの一人息子であるトラヴィスを演じるのが「ケルヴィン・ハリソン・Jr

黒人の血を引く俳優であり、映画公開当時は19歳といった若き年齢でありながら、「それでも夜は明ける」などの名画にも出演していた。

余談であるが、両親共にミュージシャンであり、ハリソンJr自身もピアノやトランペット奏者として才能を発揮している。

 

ポールの元に駆け込む男ウィルを演じるのが「クリストファー・アボット

出演する映画作品は少ないながらも、ホラーやスリラー作品への出演がとても多い俳優である。

 

ウィルの妻であるキムを演じるのが「ライリー・キーオ

主にラブロマンス作品やホラー、スリラー作品といったジャンルへの出演が多く、2018年にはラース・フォン・トリアー監督の怪作、「ハウス・ジャック・ビルド」にも出演している。

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ネタバレ感想と考察

結局、「病原体」の正体は何だったのか??

謎の多く残る本作品であったが、一番色濃く謎が残るのが「病原体の正体」だろう。

この「病原体」についての考察をしてみると、とある一つの予測が浮かんでくる。

それが「何かしらの生物による感染である」ということだ。

そんな予測が建てられるシーンとして、犬のスタンリーが病気に感染してしまうまでの流れが挙げられるだろう。

森の奥に何かの予感を感じ、吠えながら猛ダッシュで突っ込んでくスタンリーであったが、まずこのシーンだけでも「何かしらの生物」の存在を想起させる演出となっている。

そして何度も吠えていたスタンリーが一瞬で泣き止んでしまうシーンでも、正体が「病原体」であるならばこんなにも急激な体調の変化は考えにくいだろう。

そして、「赤いドア」の外側に血まみれのスタンリーの姿が確認できるが、何かしらの「物理的ダメージ」を受けていることは一目瞭然であるように見える。

そんな要素からも「空気感染」する病原体であるというよりは「何者かの攻撃」によって入り込んだ病原体の説が高く感じるが、その一方で病原体自身に寄っての感染の可能性も捨てがたい。

その理由としては、作中に流れる一枚の絵画から起因する要因だろう。

その絵画は、15世紀に描かれたとされるピーテル・ブリューゲル「死の勝利」という絵画であり、14世紀に流行し「黒死病」とも呼ばれたペストの悲惨さを物語る絵画であった。

体に黒い斑点が出るペストという病気と今作での病気も、どこか共通点があることがわかるだろう。

そんなペストがそうであったように、感染力のみによる感染であった可能性もある。

全ての真相は「闇の中」であるが、本作には「病原体」以外にも数多くの謎が残されてしまっている作風となっていた。

トラヴィスが時折見る「夢」の正体は…?

本作のジャンルが「スリラー作品」である由縁ともなっていたのが、一家の一人息子であるトラヴィスが時折見る「夢」だっただろう。

トラヴィスが見る夢では、自身の祖父であったり、一緒に暮らすサラであったり、または自分自身が「謎の病原体」に侵され血を吹き出してしまう夢となっていたが、演出上のホラー要素としては実によくできたシーンとなっていた。

ここで一つの予測が出来るのであれば、トラヴィスの見ていた夢が「正夢」となってしまったという考え方だろう。

病気になった祖父の夢を皮切りに数々の悲惨な夢を見ていくトラヴィスであるが、最後、彼自身が病気にかかってしまう夢を見る描写があり、そして物語の最後、実際にトラヴィスは病気にかかってしまう。

真偽は定かではないが、トラヴィスの夢が「病原体に対する恐怖」を媒体に広がっていったことは紛れもない事実だろう。

トラヴィス自身が病気にかかってしまう夢を見たとき、夢から覚めた彼の焦り方は、とてもリアルで焦燥感を感じる演技を見せてくれた。

また、トラヴィスがポールに励まされるシーンで、何かの絵を描いているシーンがある。

その絵には、森のような場所で木々の間に立ち、マスクのようなものをつけた人が立っている絵が描かれているが、それが「病原体の正体」だろうか?

はたまた「自分たちの姿」だろうか?

一切言及されることなく、物語は進んでいく…。




「ホラー」の中でも最も凶悪…「人間的恐怖」が色濃く描かれる!!

「信じてもいいか?」

これは本映画の主人公でもあるポールが部外者であったウィルに向けて何度か放つ言葉であるが、この一言に本作のテーマの一つが織り込まれていた。

それは「他人を信じないこと」である。

ポール自身が信じて連れてきたウィルの家族であったが、結果として言えば、これが原因でトラヴィスが感染してしまうこととなる。

映画のラストシーン、「だから言ったのに…」と言わんばかりのポールとサラのやつれた顔からも痛いほどに伝わってくるだろう。

そして、家に向かう際に襲ってくる人間であったり、酒を酌み交わす際に嘘を付いているような描写があったりと、ウィルはどことなく気持ち悪い不安を残すキャラクターとなっていた。

そして、赤いドアは確実に誰かに開けられている…。

作中では幼いアンドリューがドアを開けたとされているが、少しこじつけたような収まりどころとなったシーンにも感じた。

その点においても、謎のまま物語は終わっていく…。

被害を一番被ったトラヴィスであるが、ウィルの家族が殺される瞬間、涙を流していることも印象的なシーンであり、これまでに人とろくに触れ合わなかった彼が、初めて「家族以外」に感じる愛情の形だったのだろうか?

トラヴィスは、ウィルたちを「信じて」いたのだろうか?

彼自身がキムに口移しで病気を移されるような夢を見る描写があったが、「同じ家に住む者」以上の特別な感情を持っていたのだろうか?

もしかしたら、ドアを開けたのは…。

全てを物語らない…賛否両論になってしまった仕掛けとは!?

本映画、日本の映画評価サイト「Filmarks(フィルマークス)」で、「3.0」という低さを叩き出してしまい、Amazonプライムでも「2.5」というなんとも中途半端な評価となってしまっている。

本作品の評価の低さにもなってしまった原因として、最も大きかった要素こそが「全てが明かされない終わり方」だったことだろう。

映画というジャンルの作品の魅せ方において、「結果をあえて明かさず、鑑賞者の想像に委ねる」という演出方法は、今ではほとんどの映画作品に組み込まれる演出となっているだろう。

適度な不明確な要素があれば、これを楽しむ見方も出来るが、本作品ではこんな要素が多すぎると感じてしまう人も居るだろう…。

本作の物語でも最も重要となる「病原体の正体は何か?」という要素や、ポールを含めた「一家がどうなってしまったのか?」、そして「森の中で何が起こっていたのか?」「ウィルの『一人っ子』は嘘だったのか?」すべてが闇の中で終わってしまってる。

鑑賞者に委ねる物語の書き方にしては疑問が多く残る終わり方に、モヤモヤを感じてこの記事にたどり着いた読者も多いだろう…。笑

伏線となる要素もそこまでは多くない作品だけに、真相の影は膨らんでしまう。

新たなジャンル!!「感染」×「密室」

疑問が多く残ってしまう本作品であるが、物語の脚本としては非常によく練られた作品となっていただろう。

本作のプロットとなるのが主に「感染」であり、この世にある数々の映画作品でもこのジャンルの作品はたくさん描かれてきたが、感染の対象として「家族間でだけの感染」として描かれていた脚本は初めてだった。

感染のきっかけとなってしまったのが新たな家族の参入によってであるが、この世の数多くの「感染映画」の中でも「6人」という少ない人数で描かれた作品は、あまり多くはないだろう。

また本作は感染映画であることと同時に「密室作品」として機能している作品であることも面白い要素の一つである。

世界中で何らかの病原体?が蔓延っていることを理由に、一軒家の中で、請願された生活を送っている描写や、物語の重要なカギにもなっていた「赤い扉」の存在も、本作が「密室映画」であることがわかるだろう。

これまでに数多くの映画マニアを引き付けた「密室」という設定、そして現代にリンクする「感染」という設定の融合はとても面白い脚本となっていた。

本作を「感染作品」として、そして「密室映画」として、そのどちらとしても機能させていた要素こそが「赤い扉」の存在である。

映画のパッケージにも描かれているこの扉こそが、本映画において重要な役割を担い、そして「恐怖」を駆り立てるのにも一役買っているツールとなっていたのだ。

「恐怖」そして「密室」、いつでも隣り合わせの設定として描かれるプロットであるが、まだまだ面白い「密室映画」が存在するので見てみてほしい。

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