「ザ・ウォーク」ネタバレ感想と考察【ワールドトレードセンターを無許可で渡りきった大道芸人】

  • 2023年6月9日
  • 2023年6月10日
  • 映画
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本記事は、映画「ザ・ウォーク」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。

鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。

「ザ・ウォーク」

2015年、ロバート・ゼメキス監督によって制作された作品。

実際に存在したフランスの大道芸人のドキュメンタリー映画。

上映時間は123分。

あらすじ

舞台はフランス、パリで大道芸人として活動していた一人の男フィリップ・プティは、常日頃から「ロープを張れる場所」を探している「綱渡り師」として日常を生きていた。

彼はゲリラ的に色々な場所にロープを張っては渡り始め、喝采と共に、いつも警察のお世話になる人間でもあった。

そして彼はある日、とある新聞を目にする。

それは「アメリカ、ニューヨークに『世界一高いビル』ができた」という記事だった…。

出演役者

本作の主人公フィリップを演じるのが「ジョセフ・ゴードン=レヴィット」

 

フィリップの彼女であるアニーを演じるのが「シャルロット・ルボン」

 

配信コンテンツ

「ザ・ウォーク」は今現在、Amazonプライム、Netflix、U-NEXT、等で配信されている。

Amazonプライム

NETFLIX

U-NEXT




ネタバレ感想と考察

リアルに存在した、世界を注目させた一人の大道芸人。

大道芸人「フィリップ・プティ」

まさに今でも実在している彼こそが本作の主人公だ。

8歳の頃に鑑賞したサーカスの綱渡りに魅せられ、大道芸の世界に入る。

集団の「サーカス」には参加せず、いつも一人でゲリラ的にロープを張っては綱渡りをする人物だった。

彼を一発目に有名にしたのが1971に行ったフランス「ノートルダム大聖堂」での綱渡りだ。

これを含め、色々な場所で無許可綱渡りを行ったフィリップは、なんと500回以上の逮捕歴を持つこととなる。

そんな彼はノートルダム大聖堂での綱渡りの3年後、当時「世界一高いビル」として新聞を賑わせた「ワールド・トレード・センター」での綱渡りを行い、一躍世界中を賑わせることとなる…。

「史上最も美しい」と言われた犯罪。

ワールドトレードセンター

別名「世界貿易センター」

建設当時の1973年時点で、最も高い建物だった経歴もあるビルだ。

元々電気部品街が存在していたこの地域だったが、一帯を再開発して巨大なオフィスビルを複数作り、貿易関係の企業や公的機関を集積させるという名目の元作られたのがこのビルとなる。

そして2001年9月11日「アメリカ同時多発テロ事件」により、爆撃され崩壊する。

フィリップは複数人の協力者を用いて、頑丈なワイヤーをビル間に構築し、これを渡る計画を立てた。

そして彼は、一方通行で渡りきることなくワイヤーの前で立ち止まってみたり、渡りきることなく往復してみたり、数々の曲芸を見せた…。

そしてそれは「史上最も美しい犯罪」という言葉で後に刻まれることになる…。

そんなハラハラとする内容であったが、実は「綱渡り」がハラハラするだけではないのが、本作品の真骨頂だ。




「意味の無いこと」を全力でやると英雄になる。

今現在も世界中には体ひとつで意味もなく高いところに登ったり、屋根の上を縦横無尽に駆け巡る「パルクール」というカルチャーが存在するが、そのどれを取っても今と違い、「YouTube」などの収益化の概念が無い。

その全ては「意味がないこと」であった。

もちろんスマホなどもない時代でフィリップは色々な場所を綱渡りしていくが、そんな「意味の無いこと」に全力投球している姿がとても印象的に写った。

この綱渡りを彼は「クーデター」と呼んでいたのも印象深い。

映画後半の全てがこのワールドトレードセンターの綱渡りとして描かれているが、今回の作品で伝えたいシーンは「綱渡り」ではないと筆者は考えた。

今作で大きく描かれているのは、綱渡りまでの「課程」なのだ。

そんな課程を乗り越えて、ついに犯してしまった「犯罪行為」

一見、蔑まれるだけの行為のように思われるが、手錠をかけた彼を迎えたのは「喝采」だった。

結果、彼は罰として「チャリティ綱渡り」を命じられ、ワールドトレードセンターの展望デッキの永久無料パスを手に入れた。

一見意味の無いようなことでも、それに対する情熱があれば、それは「意味のある行為」となって多くの人々を魅力することができる…。

そんなことを伝える作品だと思う。

脚色ナシの映画がある!?

今回の「ザ・ウォーク」であるが、原作をもとに面白くリメイクされ、脚色された要素も入った作品となる。

これは「原作を元にした作品」ではもはや通例と言ってもいいだろう。

そしてそんな本作、なんと別の映画として「本物のドキュメンタリー映画」が存在するのだ。

「マン・オン・ワイヤー」

2008年、ジェームズ・マーシュ監督によって制作された作品である。

こちらは脚色ナシの本物のドキュメント映画として撮影され、フィリップ本人やその計画の「共犯者」、そして関係者までもインタビューに加え、撮影されている。

更には、「第81回アカデミー賞 長編ドキュメンタリー映画賞」を初めとする数々の賞を受賞し、2008、2009年の映画界に名を残した作品としても有名となった。

興味のある人は是非ともこちらの作品もセットで観てみるべきだろう。

本作の映画中で、喝采を浴びるフィリップにかけられるセリフの一つで、警官からの「あんなものは一生拝めない」というセリフがある。

そしてそれは2001年の9月11日の「アメリカ同時多発テロ」によって、本当になってしまった。

彼の残した伝説はこれからも語り継がれることだろう…。