「非常宣言」ネタバレ感想と考察【B級パンデミックモノと侮るなかれ…】

  • 2023年11月23日
  • 映画
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本記事は、映画「非常宣言」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。

鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。

「非常宣言」

2022年、ハン・ジェリム監督によって制作された作品。

飛行機内で起きたバイオテロ事件を描く物語。

上映時間は141分。

あらすじ

舞台は韓国、ハワイへと向かう航空便の中でとあるバイオテロ事件が起こる。

着陸を拒否された機内で、乗組員と乗客はパニックとなるが…。

出演役者

本作の主人公の一人、乗客のパクを演じるのが「イ・ビョンホン」

 

もう一人の主人公、刑事のを演じるのが「ソン・ガンホ」

 

バイオテロを仕掛けるリュを演じるのが「イム・シワン」

配信コンテンツ

「非常宣言」は今現在、Amazonプライム、等で配信されている。

Amazonプライム




ネタバレ感想と考察

B級パンデミックと侮るなかれ…

2022年に公開されたこの韓国映画、今流行りの「バイオテロモノ」の映画となっていたのは皆さんもわかる通りだ。

世の中には数々の「感染系」の作品があり、鑑賞者たちの目が肥えた今では、「普通の感染モノ」では満足できないだろう。

そんな中、今回描かれるのが「上空の飛行機内」という密室空間で起こるパンデミックだ。

設定から言ってしまえば「ベタ中のベタ」と言われても仕方がない。

しかし、「B級感染系作品まっしぐら」の本作ではあるが、意外なことに高い評価をする人が多い。

その理由は、ハリウッド映画顔負けの映画の迫力とダイナミックさに起因するものだろう。

何よりもまず、映像と音響のクオリティがすごい。

飛行機内のシーンでも、地上のシーンでも、リアルに乗っ取ったハイクオリティな演出が一番の見どころと言ってもいい。

その上で、所々に挑戦的な演出をしている点も多い。

例えば物語中盤、犯人の共謀者である男性を車で追いかけるシーンでは、後部座席からの手持ちカメラで画面酔いをするほどの逃走劇が描かれる。

そして物語終盤、スマホの「ビデオ通話」の画面だけが演出されるシーンも、それぞれのキャラクターのバックグラウンドを想起させる面白い演出となっていた。

今では「普通」となったテーマで、ここまで惹き込ませる撮影技術は、昨今の韓国映画のクオリティの高さを強く感じるだろう。

なんと…脚本も素晴らしい…。

今回の映画では、主に二人の主人公が存在している。

まずは元パイロットのパク・ジェヒョク。

「何かしらの理由」でパイロットを辞職した彼が中心に、まずは飛行機内の現場のパニックシーンが構成される。

そして刑事のク・イノが主人公の地上パートだ。

こちらでは同じ飛行機に乗り合わせる妻の救出、そして刑事として事件解決に奔走する姿が描かれている。

通常、同じ時間軸での二部構成映画作品は脚本がややこしくなりがちな作品が多いが、キャラクターのバックグラウンドをしっかりと
確立させた上で、スッキリとした脚本を演出している点は非常に秀逸であると感じた。

登場人物が多い割には各キャラクターの設定がしっかりとしていて、それに応じた伏線がしっかりと回収されているのだ。

それが集約される後半のシーン、それは「乗客全員がそれぞれの家族を守るために、死を覚悟する」ということ。

この脚本は数々のハリウッド映画、そして日本映画でも作られないような脚本だ。




細かいところにツッコむな…!!

全体的に高い評価を得ている本作ではあるが、やはり「日本人」なのであれば気になってしまう点もある。

それは日本の「着陸拒否」や自衛隊による「発砲」が演出されていることだろう。

作中では「着陸させない理由」を肯定的に捉えたセリフもある中で、人によってはこれが「日本悪」として描かれていたと評価する人も居たようだ…。

それ以外にも、「着陸拒否の理由」が不明確であったり、「ソウルまで燃料が持たない」との発言がありながら、長時間のフライトができた点、そして犯人の動機がハッキリとしていない点など、ツッコミを入れたくなるような点はいくつもあったのも事実だろう。

それでも、映画史において「パニックアクション」というジャンルは、そのドタバタ展開に頭を使わずに一喜一憂できるメリットもある。

そんなメリットを最大限に引き出していた作品と言える。