天使のくれた時間【ネタバレありなし徹底考察】

本記事では、
前半で、映画紹介&見どころレビュー
後半で、ネタバレ解説&徹底考察を行います。

「天使のくれた時間」

2000年、ブレット・ラトナー監督により制作されたファンタジー映画。
クリスマスの物語であるが、公開も2000年のクリスマスにぶつけられた。
「もしあの時、違う道を選んでいたら?」を描いたドラマである。
上映時間は125分。

あらすじ

1987年、アメリカの空港で一組のカップルが別れを惜しんでいた。
ロンドンに行こうとする「ジャック」と、見送る「ケイト」である。
ケイトは、何かの予感を感じ「ロンドン行きは考え直して」と引き留めるも、
それを振り切って、仕事で成功するためにロンドン研修に旅立ったジャック。

13年後、ジャックは大手金融会社社長として大成功を収めていた。
しかしその夜、奇妙な出来事に巻き込まれ、眠りにつくと、
翌朝、全く知らない家のベッドで、横にはケイトが眠っていた…。

出演役者

今作の主人公のジャック・キャンベルを演じるのは「ニコラス・ケイジ」

 

今作のヒロイン、ケイト・レイノルズを演じるのが「ティア・レオーニ」

 

謎の黒人男性、キャッシュ・マネーを演じるのが「ドン・チードル」

見どころ①「人生、お金だけでないことを知れる作品」

社長としていい車に乗り、金に困らず生活してきたジャック、
彼が朝起きると「それなり」の生活になってしまっている話だが、
今作で描かれる内容は、そんな生活を送っていた彼が一般市民の
生活になるとどうなるか?がテーマで、
人間誰しもが、必ず選んだことのある「二択」
そんなもう一つの分岐ルートを描く斬新なコンセプトが本作の見どころだろう。

果たしてどちらの人生が正しかったのか?
そして後悔しているか?そんなことを考えさせられる。

見どころ②「幸せは人によって違うことを認識できる作品」

ジャックが13年前にした決断で、一つの世界線を歩み始め、
今作で描かれる世界では、それぞれ全く別の幸せが存在する。
キャリアと金の幸せ、そして家族と暮らす幸せ、
それぞれにフォーカスされた描写があり、
どちらを選ぶか、本当に人によって違うだろう。
そんな鑑賞者によって感想が変わるような珍しい作品となるだろう。

配信コンテンツ

「天使のくれた時間」は今現在、
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※ここからネタバレあらすじ

1987年、アメリカの空港で一組のカップルが別れを惜しんでいた。
ロンドンに行こうとする「ジャック」と、見送る「ケイト」である。
ケイトは、何かの予感を感じ「ロンドン行きは考え直して」と引き留めるも、
それを振り切って、仕事で成功するためにロンドン研修に旅立ったジャックであった。
そして13年後、ジャックは大手金融会社社長として大成功を収めていた。

12月の24日のクリスマスイヴでも、夜遅くまで仕事をこなしたジャックは、
帰宅途中に商店に寄る。
そこで会計時、強盗に巻き込まれてしまう。
強盗との取引に成功したジャックは、
誰も傷つけずに安全に店から出ることができる。

強盗の黒人男性の名前は「キャッシュ」と言い、
暫くジャックと会話を交わすと、彼はこう語る
「これから起こることは、あんたが招いたことだ」
そう言い残すと、キャッシュは街の中へ消えていった。
ジャックは帰宅してすぐに眠りにつく。

そして翌朝、信じられないことが起こる。
全く知らない家のベッドで目覚め、横にはケイトが眠っていた…。
驚きを隠せないジャックであったが、ケイトは違和感なく過ごしている。
どうやらこの家の主らしい。そう気が付いたのは二人の子供を見たからだった。
郊外の小さな一軒家に住まい、二人の子供、犬が一匹、そしてケイト、
まるっきり違う世界線になってしまっていた。

急いで会社に行ってみるが、門前払いを受けてしまい、
社長の名前も自分ではなくなっていた。
会社の前で立往生している時に、元の自分の所持するスポーツカーに乗った、
キャッシュが目の前に現れる。
一体どういうことなのかキャッシュに詰め寄るが、確信の答えは得ることができない。
そんなキャッシュは自転車のベルをジャックに渡すと、逃げるように去ってしまう。

ジャックは夫婦となったケイトと、子供と共にクリスマスを過ごす。
パーティーに誘われ、犬の散歩を任され、
困惑しながらも日常生活を淡々と過ごした。

つぎの日、慣れない手つきで息子のおむつ替えをしていると、
それを見ていた娘が唐突に言う、「パパじゃないでしょ?」
ジャックは困惑するも、最後は「宇宙人」であると認める。

娘に色々なことを教えてもらう。
赤ん坊である息子の預け先、娘の送り先、そして自身の職場さえも。
この世界のジャックはタイヤの販売員として働いていた。

少しずつ現状を理解し受け入れていくジャックだったが、
ある日、デパートの買い物で、高級紳士服を「昔の感覚」で
眺めていたところ、ケイトに見つかり口論になる。
貧乏な生活に「月並みな生活」と愚痴をこぼすジャックに対し、
ケイトは「偉大なる成功物語」と、言うのだった。

後日、仲間とボウリング大会に参加した時、
隣人の人妻、イヴリンとたまたま出会う。
「不倫」に誘われ、連絡先を聞くジャックであったが、
友達に制止され、事なきを得る。

またある日、ケイトとの夜を過ごし、キスを交わすが、
ケイトが「あの言葉を言って」というも、ジャックにはそれがわからなかった。

その後、一人リビングで昔のホームビデオを見る。
ケイトの誕生日パーティーでの映像だったが、
そこには自分とは思えないほど幸せそうな自分が写っていた。
ケイトのためにメッセージを残し、ケイトのためにサプライズの歌を歌い、
そしてケイトとキスを交わす。

翌朝、ケイトからプレゼントを貰う、そしてプレゼントを催促される。
今日は結婚記念日だったのだ。
結婚記念日を忘れられ、落胆の表情を浮かべるケイトに、
ジャックは謝ることしかできなかった。
その夜、ジャックはケイトをニューヨークシティに連れ出す。
前の世界で住んでいたこともあり、ジャックは華麗なエスコートを見せる。

そこでジャックは、初めて自分の境遇を説明する。
ある朝全てが変わったこと、そして前は全く別の人生を送っていたこと。
昔の生活を懐かしみ、今の貧乏生活に苦言を呈すジャックだったが、
ケイトは「ジャックと結婚しなかったら私にとって確かなものが無くなる」
と語るのだった。

ある日、やっと馴染んできたタイヤ販売の仕事をしていると、
前の世界での会社の会長がタイヤを買いに訪ねてくる。
ジャックは以前、社長だった時の才能を発揮し、うまく取り入り、
会長に認められることに成功する。
タイヤ販売員を脱却し、ニューヨークの元の会社に戻る道が開けるが、
ケイトは「今のままがいい」と口論になるだけだった。

その後、ジャックは一人、家で考える。
おもむろに本棚を覗き、一冊の本を開くと一枚の航空チケットが出てくる。
それはロンドン発ニューヨーク行きの航空チケットだった。
そこでジャックは初めて気が付く、
これは13年前、ケイトに会うためにすぐにニューヨークに戻った世界線であると。

そこにケイトが現れ、当時の嬉しかった驚きについて語る。
そしてケイトは決心を伝える。
ジャックがニューヨークで仕事をするなら、家族でそれについていくこと。
そしてジャックを愛することは住所よりもずっと大切であると。

翌朝、ジャックは娘と遊ぶ、今まで見せることがなかった本物の愛情に、
娘は「本物のパパが帰ってきた」と言う。

その夜、ジャックは塩を買いに、かつてキャッシュと出会った商店へ赴く。
キャッシュは「煌きは永遠には続かない」と告げた。

家に帰り、何かを感じたジャックは、家族に別れの挨拶を告げる。
ケイトに「この数週間の僕を忘れないでくれ」と約束をする。
その夜、ジャックはどうしても寝たくなかった。
眠ってしまうと翌朝は元の生活に戻っていることが彼にはわかっていた。

翌朝、以前のタワーマンションで目が覚める。
日付は12月の25日、一晩しか経っていなかった。
かつての一軒家を訪ねるが、全く違う人が住んでいた。

ジャックは久しぶりにケイトに電話する。
彼女は弁護士として成功し、パリに旅立つ直前だった。
説得を試みるが、彼女はパリに旅立つという。

ケイトの旅立ちの日、ジャックは急いで空港へ向かう、
そしてケイトを選んだ人生のことを話す。
郊外の一軒家に住むこと、誕生日に歌を歌うこと、
そして二人の子供が生まれること。
彼はケイトをコーヒーに誘う。
そして二人はカフェで話しながらコーヒーを飲む。

ネタバレ徹底考察

受け手にも語り掛けるような映画の手法

今作で描かれる物語のテーマは、「もしあの時、違う道を選んでいたら?」であり、
誰しもがある人生における分岐のもう一つのルートの物語である。

今作ではジャックの人生で描かれるが、
これは鑑賞者自身も思いを巡らせながら鑑賞できるところが本作の、
面白いところでもある。
今回の奇跡を自分に置き換え、想像できる楽しみ方ができる、
この斬新な設定に引き込まれた鑑賞者は多いだろう。

「どっちの人生がいい?」というような二者択一を迫られているような、
面白い問いかけをしてくれる作品である。
映画を観せながら、受け手に想像させる手法はとても新しいものであった。

人によって変わる、幸福の定義

今作で描かれる二人の登場人物、ジャックとケイト。
彼らそれぞれの求める幸せは全くの別物である。
そんな「幸福の定義」が人によって違うことを再認識するような、
映画の脚本がとても面白いものだろう。

そして同じ自分でも、自身の境遇や生活、収入、人間関係で変わってくる
幸せの定義、「何を持って幸せとするか」というものにフォーカスしたこの作品は、
人を選ばず、万人の心に刺さるような作品となるだろう。

先ほどの「どっちの人生がいい?」という質問を投げかけた時、
鑑賞者によって、どちらの人生も需要があるものとなるだろう。

ジャックの心理描写の変化を紐解く

物語の序盤、ジャックはワンナイトの女性に明け暮れ、
何よりも地位や名誉、金を重んじるタイプの人間であるが、
物語の終盤、彼は「本当に独りぼっちで…」と、こぼす。
今作は、そんな彼の心理変化がとても楽しめる作品だろう。

最初はすべてが幻であり、夢だと思い込み、
決して大金持ちではない「それなり」の生活に嫌気がさすが、
物語終盤で、彼は航空券を発券し、気が付く。
「あの時、こっちを選んでいれば、この人生だったこと」
そんな「もしかしたらこうなっていたかもしれない」という、
状況が生み出した心理の変化だとぼくは考えている。

最後では、あれだけ戻りたかった世界に戻ってきたのにも関わらず、
どこか悲しげな立ち振る舞いを見せる。
そんなジャックの心理変化が手に取るようにわかる描写も本作の見どころだろう。