ぼくは珈琲がとても好きだ。
お気に入りのカフェで豆を購入し、
お気に入りの電動ミルで挽いて、
お気に入りのネルでドリップし、
お気に入りのマグで飲む。
そんなぼくはもちろん「日本一周」の旅にも、
草原の星空の下、ホットコーヒーを啜る景色を信じて珈琲豆を持っていったわけだが、
5月〜10月の旅で「ホットコーヒー」をドリップするメンタルなどあるはずもなく、
トラックの往来激しい駐車場、蒸し暑い車内で蚊と格闘する日常を送っていた。
約半年の旅で珈琲を飲まないまま旅を終え、帰宅し、
半年ぶりの自分でドリップした珈琲の味は今でも忘れられない。
「クッッッッソマズッッッッ…!!!!」
蒸し暑い車内で半年熟成された珈琲豆は猟奇的な酸味でぼくの舌を刺した。
「酸味が増した」という単純な話ではない。
香りや深みなどが消え、
「苦味」とは違う「えぐみ」の要素が倍加しているのだ。
早い話が、豆が腐っていた。
「落胆」以外の文字が見当たらない脳内で、必死に導き出したのは味を誤魔化すことだった。
ミルク、砂糖、チョコレート、結婚式の引き出物のバームクーヘン、
ありとあらゆる誤魔化し方をしてみたが、どうしてもこの一杯を愛することができなかった。
正直、捨てるのは勿体ない…
しかし、検索しても出てくるワードはいつも豆の「処理」や、「有効利用」に関すること…。
そんな中、見つけたひとつの記事。これが一筋の光だった。
ここで記述される起死回生の方法。
それは珈琲をもう一度「焙煎」することだった。
只、豆の状態でなく、「粉末」の状態からフライパンで炒るというアナログな手法だ。
なるほど…!!
昔メディアで「アハ体験」なるワードが流行ったが、ぼくは久しぶりにそれを体験した。
早速試してみよう。
まずは電動ミルの調節。
いつも細挽きの珈琲粉を使いドリップするぼくのスタイル
16段階の粗さ設定ができるぼくの電動ミルだがいつも設定は4前後。
(細1←→16粗)
これを12に設定してみた。
これは珈琲粉が炒りやすくなるだろうという自分の勝手な考えである。
そしていざ、フライパンに投入…!!
そして念を込めてひたすら炒るッッ!!
珈琲豆のいい香りがしてくる。
やらなすぎもダメ…
やりすぎもダメ…
ちょうどいい煎り具合を見極めて引き上げ、
粉が熱いうちにドリップ。
これがなかなか難しい。
ドリップ。
ここで衝撃を受ける。
ドリップした時の香りが炒る前とまるで違う!?
香りでこんなにも違いが出るのか…
というくらい変わった。
恐る恐る一口飲んでみる。
…味も全く違う…!!
良くはない…が、「最悪」は免れている…。
コクは戻ってこないが、香りは少し戻ってきた。
そして嫌な「酸味」と「えぐみ」は完全に取り払われた無機質な味となった。
例えるならば…セブンの安いドリップ珈琲の下位互換と言った所だろうか。
これに牛乳と砂糖を入れて「ミルクコーヒー」にしてしまえば…
飲める…!飲めるぞ!!
こうしてぼくの挑戦は終わった。
コーヒー豆は本当に奥が深い。
そして「車内放置」はどんなものでもイケナイことを知った。
これからも素敵なコーヒーライフを。