本記事は、映画「FALL/フォール」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。
鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。
「FALL/フォール」
2023年、スコット・マン監督によって作られた作品。
塔の上に取り残されるシチュエーションスリラー映画。
上映時間は106分。
あらすじ
舞台はアメリカ、夫のダン、友達のハンターとクライミングを楽しんでいたベッキーであったが、滑落によりダンを失ってしまう…。
1年間近く悲しみに暮れたベッキーであったが、ハンターに励まされ廃墟となった「B67テレビ塔」に上り、そこからダンの遺灰を撒くことで、悲しみを断ち切ることを提案される。
かくして2人は、人生一番のチャレンジへと挑む…。
出演役者
本作の主人公ベッキーを演じるのが「グレイス・カリー」
友達のハンターを演じるのが「バージニア・ガードナー」
配信コンテンツ
「FALL/フォール」は今現在、Amazonプライム、Netflix、U-NEXT、等で配信されている。
ネタバレ感想と考察
ありそうで無かった…究極のシチュエーションスリラー!?
これまでに散々描かれたシチュエーションスリラー作品であるが、このタイプはありそうでなかったのでは無いだろうか?
周りは砂漠、高さ600mの塔の上に二人取り残される…。
手に汗握る映画作品としては最上級の出来と言ってもいい。
なぜこれまでこの手の映画が作られなかったのだろうか?と考えてみたが、やはり一番はそれを実現できるCG技術が要因だと個人的には思っている。
今回の作品はドローンの空撮やCGを用いて、限りなくリアルに再現された作品で、2024年の今でこそ映えるシチュエーションとなっていたのかもしれない。
限りなくA級に近い…B級映画!!
昨今のシチュエーションスリラー作品では、物語のメインストーリーに加え、主人公達に各々の人間ドラマが添えられているパターンが多い。
今作も例外なく、主人公であるベッキーの夫であるダンの死や運命を共にするハンターとの確執など、ストーリーはしっかりと構成されている。
しかし、これらのストーリーはシチュエーションスリラーに落とし込むと、「かなり浅くなってしまう」と思っているのが筆者個人の見解だ。
リアルであればどれだけ誘われても「登らない」だろう。
アクション要素でも生きたハゲワシを食したり、現実では到底考えられない行動が伺える…。
揺れるハシゴや緩むボルトは、さながら「ファイナルデッドコースター」シリーズを思い出すようなB級感が描かれ、それが良くも悪くも手に汗握る展開を演出してくれている。
そして、シチュエーション映画史上、最大の「からくり」に着手したのもこの作品なのだ。
まさかの演出…シチュエーションスリラーでこの裏切り…!!
映画の中盤まで、主人公に寄り添う中心人物の一人となったのが、このハンターという女性である。
映画の後半まで彼女の存在は、ベッキーの傍らにあるが、なんとそれは「ベッキーの生み出した幻覚」だったのが面白い。
彼女は物語の中盤で死亡しているのだ。
よくよく思い返してみれば、物語中盤以降のハンターの動きは伏線としても機能している。
自分の方が上手いはずのドローンの操縦を全てベッキーに任せたり、口数も極端に少なくなる…。
そしてベッキーは、ハンターが居なくなり、ハゲワシに食べられる夢を見る…。
実はダンの死に対しても、彼が死亡している夢を見るシーンもある。
「ベッキーの見る悪い夢」が、全て現実であったことのミーニングとしても効いているのだ。
物語はフィクション…じゃないの…??
もちろん、今回の物語は完全フィクションとなっていて、「B67テレビ塔」は存在しない。
しかし、モデルとなった塔は実在している。
アメリカのノースダコタ州にある「KVLY-TV塔」という塔で、高さはなんと628.8mにもなる。
映画の塔が600mちょうど、という計算なら、それを上回る高さということになる…。
そして、このKVLY塔にも、不法侵入して登る人々も存在している…。
2005年には、落ちて重症を負う事件すらも発生しているのだ。
今回の映画を作った監督はスコット・マン監督と脚本家であるジョナサン・フランクが共同で作った作品であり、このタッグはスタントアクション作品のプロコンビでもある。
そんな彼らの織り成す世界観が、より一層作品にリアリティに拍車をかけているのかもしれない。