本記事は、映画「グラウンド・デス」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。
鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。
「グラウンド・デス」
2018年、ラスマス・クロスター・ブロ監督によって制作されたデンマークの映画。
地下トンネルに取り残された男女のシチュエーションスリラー。
上映時間は88分。
あらすじ
舞台はコペンハーゲン。
地下鉄を作る一大プロジェクトが進む中、そんな現場のPR記者として、リーは現場の人間にインタビューを行う。
地下20mで行われる過酷な現場作業を取材する中で、なんとトンネル火災に見舞われてしまう…。
出演役者
本作の主人公、リーを演じるのが「クリスティーン・ソーンデリス」
ベテラン現場作業員、イーヴォを演じるのが「クレシミル・ミキッチ」
出稼ぎ労働者のバランを演じるのが「サルヴァトーレ・ストリアノ」
配信コンテンツ
「グラウンド・デス」は今現在、Amazonプライム、等で配信されている。
ネタバレ感想と考察
現場の苦労を知らないホワイトカラーの構図。
今回の作品、完全なるシチュエーションスリラーとして描かれてはいるが、実の所「思っていたよりも凝った脚本」であったのは間違いないだろう。
まずは、事故が起きるまでの人間相関図を整理してみよう。
①リーは「コペンハーゲン地下鉄プロジェクト」の広報担当であり、現場のことは全く知らない。
一人娘がいる。
②現場で働くベテラン作業員イーヴォは、家族を養うために、嫌々危険な業務に携わっていた。
家族とは年1で会える。
③出稼ぎのバランも家族に残した借金を返済するために、危険な業務に携わっていた。
そしてリーは、これらの面々にインタビューで、この労働に対してポジティブな意見を求め、ズケズケと足を踏み入れる心理描写がされている。
表向きは「地下鉄開発プロジェクト」というポジティブな一大プロジェクトが描かれているが、その裏では過酷な労働を強いられる現場作業員が居る…。
この構図はリアルの世界でも想像に容易く、そんな「光と闇」が描かれているのが、非常に特徴的であった。
スリラーパートに入っても…留まることを知らないリーの快進撃!?
上記のような心理描写が繰り広げられる中で、密室で出られなくなった3人の物語は進んでいく。
そしてそこでも「現場を知らない」リーの快進撃は止まらない。
彼女は残された貴重な水を一人ガブガブと飲み続ける。
一人パニックに陥っては、ハランに諭され落ち着きを取り戻し…小並感溢れるキャラクターとなってしまっていた…。
更には、渡された「酸素マスク」を2人に内緒にし、閉じ込め、一人脱出を試みようとさえする。
「娘には私しかいない」と豪語する彼女の生への執着は、どこか自己中心的に見えてしまう人もいただろう。
まさに「素人全開」のこのキャラクターであるが、主人公として描かれるキャラクターがこういう形なのもまた珍しい。
あまりに水を飲みすぎるリーに、ハランは自身が体験した、「水を飲み過ぎないようにガソリンを混ぜる」というエピソードをリー聞かせる。
そのセリフは本作一番のパワーワードとなっていた。
最後の最後まで「遺恨」が残るバッドエンド…!?
リーの傍若無人な「生への執着」に振り回される2人であったが、挙句イーヴォは死亡。
そしてリーとハランが、泥の中で一つの酸素マスクを奪い合うトラウマシーンがある。
ここでもリーは「ハランの借金を肩代わりすること」を条件により多くの酸素を吸引しようとする。
結果2人は生還…。
集中治療室でお互い向き合う形で目が覚める終わりとなった。
なぜリーは、瀕死のハランを助けようとしたのか?
この後2人はどのような会話を交わしたのか?
和解できたのだろうか?
全ては鑑賞者の想像の範疇に留まる。
「暗闇」「密室」「酸素欠乏」という、閉所恐怖症の人にはとんでもなく苦痛な作品となっていたが、類似作品として2010年に公開された「リミット」という映画もある。
こちらは男性が一人、土に埋められた棺桶に閉じ込められる物話である。
あなたはどっちが好みだろうか…?