本記事は、映画「シェイプ・オブ・ウォーター」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。
鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。
「シェイプ・オブ・ウォーター」
2017年、ギレルモ・デル・トロ監督によって制作された作品名。
人間と半魚人の禁断の恋を描いた物語。
上映時間は124分。
あらすじ
舞台はアメリカ、ソ連との冷戦時代、アメリカの航空宇宙研究センターに半魚人が送り込まれてくる。
重大な研究対象として隔離される中、一端の掃除婦、イライザが半魚人に接触する…。
出演役者
本作の主人公、イライザを演じるのが「サリー・ホーキンス」
軍の科学者、ストリックランドを演じるのが「マイケル・シャノン」
配信コンテンツ
「シェイプ・オブ・ウォーター」は今現在、Amazonプライム、等で配信されている。
ネタバレ感想と考察
最強すぎるファンタジー!これぞデル・トロの真骨頂!
ギレルモ・デル・トロ監督のファンタジー映画では「パンズ・ラビリンス」がとても有名であるが、これの対をなす存在となるのが本作「シェイプ・オブ・ウォーター」だ。
彼の描くファンタジー作品の主人公は、いつも言葉にできない魅力が備わり、世界観もオシャレに演出される。
今作は言わば「美女と野獣」の物語を意識するような構成であるが、本質は「人間と半魚人の恋」となる。
異種同士の恋仲において、非常にセンシティヴな内容をストレートに表現していて、こんな表現ができているのも、ファンタジーな世界観があってこそなのだろうとも思っている。
また、人間であるイライザも、所謂「普通の人間」ではなく、声が出ないという障害を持っている。
イライザの周りでは、彼女意外にも同性愛者の隣人であったり、黒人であったりと、差別の対象として見られる恐れのある人々が主だった。
疎まれ合う者同士の儚げな恋、それをデル・トロワールドに落とし込んだ作品がこの作品なのだ。
部屋を水で満たしてしまうイライザと半魚人、こんなファンタジーは他の映画監督には書けない。
人魚だったイライザの膨大な伏線
人魚だったイライザであったが、もうわかる通り、最後に至るまでに数々の伏線が仕組まれている。
この伏線は、比較的わかりやすいものから、細かなところまで多岐にわたる。
・イライザの首には三本の傷があるが、これはエラだった。
・イライザはいつも、お風呂の中でオナニーする。
・イライザは地上で足を手に入れたので、その喜びから、たくさんの靴やステップを踏む音楽が好き。
・イライザはバスの中で水滴を操る。
・イライザは雨の日を予測できる。
また、終始声が出ないイライザではあるが、これは「人魚伝説」の物語がそのまま当てはめられている。
童話の「人魚姫」は、美しい歌声で海の生き物たちを魅了していたが、人間社会に憧れ、尾ひれを脚に変えることと引き換えに美しい声を失うという話なのだ。
「色」で考察するシェイプオブウォーター
一連の物語の舞台となるのは「航空宇宙研究センター」で、そんなセンターで今作の「敵」として描かれるのが、科学者のストリックランドだ。
彼が常に、緑色の飴を好んで舐めているのは作中でも言及されているが、この「緑」に仕掛けがある。
作中における「緑」は、言わば科学の象徴、緑色そのものが、イライザと半魚人の「敵」と認知されるカラーなのだ。
施設内で、イライザが身に纏う掃除着は緑、タイムカードも緑、そしてストリックランドは緑の飴を舐め、緑のキャデラックに乗り込む。
意識してみれば、施設内は常に緑に溢れていることがわかるはずだ。
そんな科学は無慈悲にもイライザと半魚人を襲う。
対して、イライザ側のテーマカラーは「赤」、そして「青」となっている。
彼女はプライベートでは「赤」を身に纏うシーンが目立ち、研究所内のシーンと家のシーンでは、色が切り替わる演出となっている。
半魚人は作中を通して「青」であり、体も青く発光する。
もはや有名になりすぎた、パッケージのシーンでは、そんな青にイライザの赤い衣装が良く映える名シーンとなっていた。