本記事は、映画「バタフライ・エフェクト」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。
鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。
バタフライ・エフェクト
2004年、エリック・ブレス、J・マッキー・グランバー両監督により制作されたサスペンス映画。
カオス理論の一つ、バタフライ効果をテーマに製作されたタイムリープがメインとなる作品で、アメリカでは初登場1位を記録した名画である。
主演はアシュトン・カッチャー。
上映時間は114分。
あらすじ
アメリカの街に住む少年エヴァンは時折、記憶が無くなるという障害を抱えていた。
しかも記憶が無くなる時は決まって大事な場面で、気が付くと猟奇的な絵を書いていたり、包丁を持って立っていたり、母親に心配をかけ、精神病院にも連れていかれた。
よく遊んでいた友達、トミー、レニー、そして好意を寄せるトミーの妹、ケイリー。
ある日、彼らと近所の家のポストにダイナマイトを入れるという危険な遊びをしていたところで、持病である「記憶喪失」が起こった。
その一件を機に、エヴァンは遠くに引っ越すこととなり、ケイリーとは離れ離れになってしまった。
それから7年後、7年間正常な記憶のまま過ごしていたが、ある日、幼少のころから書いていた日記を読むと、記述しているシーンにタイムリープできることに気が付く。
ケイリーが幼少期のトラウマにより、自殺してしまう現実を受けて、エヴァンはケイリーを救うため、「タイムリープ」を決意する。
出演役者
主人公エヴァンを演じるのは、「アシュトン・カッチャー」
アメリカで活動する俳優。
イケメンでありながらも「実力派」であり、数々の映画作品に出演している。
昨今ではアメリカのTVドラマへ出演している。
今作のヒロイン、ケイリーを演じるのが「エイミー・スマート」
アメリカの女優で、彼女も数々の映画作品に出演している。
コメディ作品への出演が多く、アメリカのTV等への出演も多い。
ケイリーの兄、トミーを演じる「ウィリアム・リー・スコット」
本作「バタフライ・エフェクト」をはじめとした、サスペンス作品への出演が多い俳優である。
出演作品数は少ないようだ。
友達のレニーを演じるのが、「エルデン・ヘンソン」
子役時代からたくさんの映画作品に出演する俳優であり、今現在も「ハンガー・ゲーム」シリーズなどで活躍している。
ネタバレあらすじ
- ネタバレあらすじを読む
- 大学生になったエヴァンが、部屋に連れ込んだ女の子に日記を見つけられ、
そこでタイムリープができることを知る。
その後、記憶の欠落箇所の真実を知る為や、
自殺したケイリーを救うために、タイムリープし、
過去を変えることを決意する。
ケイリーは幼少期の
「性的虐待」がきっかけで不幸になってしまうが、
その過去や、他の出来事を塗り替えるために、
タイムリープをする。
だが、エヴァンは色々な過去に飛び、
家族や仲間を救おうとするが、
どの過去を変えても、
誰かしらが不幸になってしまう結果が待っていた。
そして少年期の「記憶の欠落」は、
タイムリープで現代の自分が入り込むことにより、
起こっていた現象であることを知る。
猟奇的な絵を書いたり、包丁を持って立っていた、
少年エヴァンは、
タイムリープしたエヴァンが過去を変えるために行った行動に
よるものだったのだ。
ある時の過去を変えれば、
ケイリーが薬物中毒に、
違う過去を変えれば、
友達のレニーが「精神病院患者」に、
また違う過去では、
エヴァンの両腕が無く、母親が肺ガンであったり、
何度も何度も過去を変えて繰り返す。
そしてエヴァンが最後に導き出した答えは、
「ケイ二ーと出会わないこと」だった。
エヴァンはケイ二ーと知り合ったホームパーティーにタイムリープし、
突き放す言葉をかける。
怖がり離れていく、
少女のケイ二ーに「さよなら」とつぶやく。
現代に戻ると、ケイ二ーという人物とは
出会っていない設定となっていて、
彼女もまたエヴァンのことを知ることなく、
幸せな人生を送っていた。
「これでよかったんだ」
エヴァンは日記帳をドラム缶に入れて燃やす。
それから8年後、会社員として働くエヴァンは偶然、
ケイ二ーとすれ違う。
お互いに振り返るが、
声をかけることなくエヴァンは歩き始める。
ネタバレ徹底考察
タイムリープモノの金字塔、鬼の伏線回収
本作のタイトルにもなっている「バタフライエフェクト」
その意味を紐解くと、カオス理論の一つである「バタフライ効果」から着想を得ていることがわかった。
「バタフライ効果」
蝶がはばたく程度の非常に小さな撹乱でも遠くの場所の気象に影響を与えるか?
という考えに基づいたもので、
力学系の状態にわずかな変化を与えると、
その後の系の状態が大きく異なってしまうという現象。
本作の主人公は「日記」を読むことで、タイムリープが可能になるが、タイムリープをして些細な未来の変化を起こすだけで、全く違った未来を作りあげる。
何度繰り返しても、救いたい人々を全員救うことができない主人公の葛藤がリアルに描かれている。
そんな「バタフライ効果」をプロットした「ループ映画」、伏線回収の部分で期待を裏切らない作風に仕上がったのはこの要素が大きいだろう。
各所に張られた伏線をドラマティックに回収していく目が離せない脚本
「タイムリープ」にたどり着くまでの少年期の間、エヴァンの身には不思議なことがいくつも起こる。
そのすべてが、伏線として機能し、どんどん回収されていく脚本に引き込まれ、目が離せなくなってしまう魅力がこの映画にはある。
主人公エヴァンの、願うケイリーの幸せ。
そして仲間を救おうとする優しすぎる性格。
観ていて胸が詰まるようなシーンも多く、そんな未来を変えようと奔走するエヴァンに感情移入してしまうような作品となるだろう。
伏線だけではなく、映画の脚本自体をよりドラマティックに仕上げ、サブカルチャー層に寄せた作風は当時の若者たちに絶大な人気を生みだした。
売れた理由は「伏線回収」そしてダークで複雑なストーリー構成
今作の「バタフライエフェクト」はアメリカで初登場1位を獲得した作品であり、「伏線回収」に軸を置いた作品である。
分類でいうところの「バックトゥーザフューチャー」と似たような構成だろう。
「バックトゥーザフューチャー」シリーズは一本2時間のシリーズが1~3まであり、笑いあり涙ありのハリウッド超大作であるが、「バックトゥーザフューチャー」よりもかなりダークで難解な設定であり、SF要素が薄い作品であるところが、大人を中心に売れた要因でると考える。
数々のダークにまみれたシーンがあることはもうお気づきだろう。
・ダイナマイトで母子が爆破される。
・ダイナマイトでエヴァンの両腕が吹き飛ばされる。
・7歳にしてポルノビデオの撮影の強要。
・愛犬を袋に入れ、ガソリンをかけて燃やされる。
などなど、だいぶサイコなストーリーである。
序盤の包丁のシーンでは、最初は鳥肌が立ち、「ホラー映画?」と思ってしまった人も多いのではないだろうか?
これらの「怖いシーン」が伏線であることを理解し、回収された時の安心と快感は、今作でしか味わえないものであり、言葉で説明するにはいささか難解な設定をここまでわかりやすく、2時間に納められた点では、秀逸な構成と脚本に多大なる拍手を送りたい。
恋愛映画としての見方とラストシーン
今作のもう一つの注目するべきポイントは「恋愛映画」として観た時に、バッドエンドである点だろう。
繰り返すタイムリープの中心にはいつでもヒロインのケイリーがいて、また、タイムリープを酷使しはじめたきっかけがケイリーであるところから見ても、エヴァンとケイリーを描いた恋愛作品としても受け取れる作品である。
そして待ち受ける結果が、「そもそも出会わなければ幸せだった」である。
しかも幼少期のケイリーに、エヴァンが言うセリフにも注目である。
「そばに来るな、近づいたらお前らみんな殺すぞ。」である。
このセリフには心が震えた。
そして狙ったかのように流れるoasis(オアシス)の「Stop Crying Your Heart Out」
特にサブカルチャーを敬愛する若い世代にはガッツリ刺さる終わり方であろう。
バッドエンドでありながらも、嫌悪感を感じさせないラストシーンの脚本と雰囲気作りこそが、本作の最大の人気の秘訣であると考えている。
ディレクターズカットの謎
今作の終わり方、エヴァンとケイリーは接触することなくすれ違って終わるが、実は、これ以外に2種類の別エンディングが存在する。
DVDには収録されていたが、「ストーカー編」と「ハッピーエンド編」
・ストーカー編
すれ違った後に、エヴァンがこっそり後をつけていき終わる。
・ハッピーエンド編
接触し、何故か名前を知っていることをアピールし、その後珈琲に誘う。
…と。いうものであるが、
これに監督はかなりの酷評コメントを残している。
「意図してケイリーから離れたのに、これでは意味がない。エヴァンは全く学習していない」
そもそもなぜこのようなエンディングを作ったのかは闇の中ではあるが、のような別エンディングもあることだけ記述して、筆を置くこととしよう。