本記事では、
前半で、映画紹介&見どころレビュー
後半で、ネタバレ解説&徹底考察を行います。
「ピンポン」
2002年、曽利文彦監督により送り出された青春映画。
原作は松本大洋による、1996年に発行された同名漫画が原作となる。
今作の脚本として宮藤官九郎が参加している。
卓球をこよなく愛する二人の青年を描いた青春映画である。
上映時間は114分。
あらすじ
舞台は日本の高校。
片瀬高校に通う主人公「星野(ペコ)」は卓球をこよなく愛する高校1年生だった。
将来はヨーロッパで卓球をするという夢を持ちながら、高校の卓球部はサボってばかりだった。
そんな星野の幼馴染、もう一人の主人公である「月本(スマイル)」もまた卓球を志していた。
昔から内気な性格だった月本にとって、星野はヒーローだった。
星野から卓球を教えてもらい、惰性で卓球を続ける月本であったが、
目立ってはいないが確かな才能を秘めていた。
そんなある日、片瀬高校に一人の男が現れる。
中国のナショナルチームを抜け日本で卓球を志す「孔(チャイナ)」であった。
彼は一対一の勝負を挑みに来たが、その相手は星野ではなく、月本だった…。
出演役者
主人公の星野を演じるのは、「窪塚洋介」
もう一人の主人公、月本を演じるのは「ARATA」である。
インターハイチャンピオン、風間を演じるは「中村獅童」
その他も「竹中直人」や「夏木マリ」など、
そうそうたるメンツが出演役者として出揃う。
見どころ①「原作とは違ったニュアンスの臨場感、今までになかったスポーツ映画」
原作となる作品は「松本大洋」、そして曽利文彦、宮藤官九郎により制作されたこの映画、
制作者が織りなす独特の構成と、映画の雰囲気を存分に感じ取れる作品となっている。
主人公である星野のぶっとんだキャラクター、
そして月本の大人しいキャラクターが見事にマッチし、
今までになかった青春映画を作りあげている。
原作では、映画で描くのがなかなかに難しい、個性あふれるキャラクターが数多く登場するが、
それらのキャラクターを殺すことなく、うまく描けていて、
曽利文彦、宮藤官九郎、二人の実力が存分に伝わる作品となっているだろう。
見どころ②「CGを駆使した試合のシーン、そして秀逸なBGM」
原作ではかなりの臨場感を放っていた「試合のシーン」
果たして映画でこれがどう描かれるか、正直不安が大きかったが、
映画作品を観てみると、そんな不安が吹き飛ぶような臨場感へと仕上がっていた。
今作での試合のシーンは、卓球台~ボールまで、全てフルCGで作成され、
汗の一滴一滴までも、原作を殺さない映像に仕上がっている。
また、試合のシーンやその他のBGMでは、
「スーパーカー」「石野卓球」「BOOM BOOM SATELLITES」など、
映像やキャラクターに引けを取らない名だたるアーティストが参加し、
楽曲提供を行っている。
配信コンテンツ
「ピンポン」は今現在、
Amazonプライム、U-NEXT、dTV、等で配信されている。
※ここからネタバレあらすじ
片瀬高校の卓球部に属する星野と月本。
中国のチームから来日した強豪「孔」が一対一の相手に指名したのはなんと月本だった。
風間や、孔からも月本は注目を浴びていたが、
今までずっと後ろを付いてきていた月本が注目を浴びていることに
違和感を隠せない星野の存在があった。
その後の大会、星野はかつての幼馴染、海王学園に進んだ「佐久間(アクマ)」に敗れ去ってしまう。
そんな佐久間も風間に認められるために月本に勝負を挑むがあっさり敗れ、海王学園を退学し、
卓球を辞めてしまう。
時を同じくして、やさぐれた星野も卓球から離れ、学校にも行かず荒れた生活を送っていたが、
海王学園を辞めた佐久間と再会し、卓球を辞めないように激励の言葉を受ける。
そこから再起を図る星野の努力が始まる。
昔から通い詰めた卓球場、「タムラ卓球」のオババの元で鍛えなおした星野は、
翌年のインターハイ予選に臨む。
準々決勝で孔を下し、準決勝で風間をも下した星野は、決勝の場でいよいよ月本と戦う。
月本はヒーローである星野との決勝に臨む。そして星野は月本に勝利し、優勝を果たした。
その後、月本は会社員として働きながら卓球を楽しみ、
星野はヨーロッパで戦う選手として活躍している姿があった。
ネタバレ徹底考察
濃すぎるキャラクターとそれぞれのストーリー
本作の登場人物、数多くの強い個性を持った登場人物が出演するが、
そんな登場人物一人ひとりにそれぞれのバックストーリーや想いがしっかり設定されているのが、
本作の面白いところだろう。
・星野(ペコ) 月本のヒーローであり卓球をこよなく愛する青年。 才能はあるが中途半端な努力により、佐久間に負けてしまい、やさぐれる。 ・月本(スマイル) 星野はヒーローであり、それを追いかけて卓球を始める。 卓球に関しては「ただの暇つぶし」というドライな感情を持っているが、 とてつもない才能を持っている。 ・佐久間(アクマ) 二人と同じ幼馴染で、幼少期では月本をいじめていた。 全国レベルの卓球校、海王学園に進むが、月本にあっさり負けてしまい、 月本の才能を羨んでいる。 ・風間(ドラゴン) インターハイ王者であり、常日頃から王者であるプレッシャーと戦い続けている。 試合前はトイレの個室にこもり、プレッシャーと戦う。 ・孔(チャイナ) 中国のナショナルチームに属していたが、落ちてしまい、日本で再起を図ろうとしている。 ・小泉(月本のコーチ) 才能あふれる月本に魅了され、コーチするが、なかなか受け入れてもらえない。 自身も過去にプロ卓球プレイヤーだったが、 卓球人生を断念した自身に月本を重ねている。
これらの背景を知りつつ繰り広げられる試合のシーン。
主人公だけを応援するような作品ではなく、
思わず敵も応援してしまうようなアツさがこの映画にはあるだろう。
裏の主人公は佐久間
通常のスポーツ作品には
今作の映画はなかなか特殊であり、通常のスポーツ作品には登場しないキャラクターが出てくる。
それは「才能無き者」である。
個人的には本作の「裏の主人公」と言ってもいいそのキャラクターが「佐久間」である。
幼少期から卓球を始め、卓球の強豪校である海王学園に入学するも、
あっさりと月本に負けてしまう。
そんな佐久間の月本に負けたシーンが最大の名シーンであると言えるだろう。
「俺は努力したよ!お前の10倍、100倍、いや1万倍は努力したよ!」
それでも勝てない才能無き者の現実こそ、一般視聴者の共感を得るのだろう。
「飛べない鳥もいるってこった」
心に突き刺さる名言である。
そんな濃いキャラクターたちが織りなす今作、
原作の漫画も名作だが、映画も引けを取らない良さである。