2つ目の窓【ネタバレありなし徹底解説】

本記事では、
前半で、映画紹介&見どころレビュー
後半で、ネタバレ解説&徹底考察を行います。

「2つ目の窓」

2014年、河瀨直美監督によって制作された劇映画。
鹿児島県の奄美大島を舞台に生きる男の子と女の子の物語。
上映時間は110分。

あらすじ

舞台は鹿児島県の奄美大島。
旧暦の8月に行われる祭り、八月踊りの夜、海岸に男の遺体が流れつく。
近所の高校に通う「界人」は死体を目撃してしまうが、走って逃げてしまう。
翌日、彼女である「杏子」と合流し、事件について聞かれるが、界人は元気がない様子であった…。

出演役者

今作の主人公、高校生の杏子を演じるのが「阿部純子」

 

もう一人の主人公、
杏子の彼氏で同じ高校に通う界人を演じるのが「村上虹郎」

 

杏子の父親の徹を演じるのが「杉本哲太」

 

杏子の母親のイサを演じる「松田美由紀」

 

界人の父親の篤を演じる「村上淳」は、
界人役を演じる村上虹郎の実の父親である。

 

界人の母親の岬を演じるのが「渡辺真起子」である。

見どころ①「「命」がテーマとなる作風と一風変わった青春」

今作の作品のテーマとなるのは「命」
そして「若さ」「死」とも言える。

奄美大島という大自然に囲まれ日常生活を送る高校生は、
これらにテーマに対して都会の高校生と違う考えを持っているのは明らかだった。

制服で海に入り、泳いでしまうような自然の中で、
思春期真っ最中の男女の関係が描かれる。
一般人では経験することが無いような彼らの成長こそが、今作最大の見どころだろう。

見どころ②「奄美大島の映像美とカメラワーク」

今作の映画、舞台が奄美大島ということだけあり、とても映像には力を入れた作品となる。

場面場面によって手法が違うカメラワークと、自然の風景を映しているシーンの、
長い間の取り方や波打ち際の海の音、どれもが奄美大島の良さを120%引き立たせる演出であり、
計算された構成だろう。
そして、あなたは奄美大島に行ってみたくなるだろう。

配信コンテンツ

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※ここからネタバレあらすじ

海岸に男の遺体が流れ着いた翌日、
界人は元気がなかった。
彼女である杏子は界人を心配して声をかけるが、これも反応は薄かった。
界人は母親と2人暮らしで、いつも仕事などの用事で家に居ないような母親だった。

杏子は制服のまま海へ飛び込み、泳ぎ続ける。
界人が杏子を迎えに来て、界人が漕ぐ自転車に二人乗りをし、杏子の家に向かう。
杏子の家は父親が自然あふれるカフェを営んでいた。
杏子はカフェのベンチで界人に話しかける。
「お母さんあんまり良くないんだ」
杏子の母親は大病を患っていた。
医者には近々亡くなるとまで言われていた。

杏子はユタの祖神様へ相談に向かうも死を受け入れることを諭されただけだった。
杏子の母親であるイサもユタ神様としての仕事をし、
人と神の狭間で生きていると言われてきた。

杏子は母親のいる病院に向かい母親と話す。
イサは娘に死ぬことなど怖くないと話し、
命は繋がり、親から子へと受け継がれていくと笑う。

杏子と界人はいつものように一緒に行動し、
海沿いのベンチに座る。
杏子は界人に海に入らないことを指摘すると、
界人は「海は生きているから怖い」と語る。
杏子はサーフィンが海と一つになれると語り、
海と1つになれる瞬間がセックスと似ていると話す。
杏子から界人に唇を重ねるが、そこからの発展は界人はさせなかった。

界人の母親である岬は、昔に父親と離婚していて、
界人は東京にいる父親に会いに行きたいと、岬にせがむ。

一方、杏子の家では、先が長くないイサを自宅に移し、
最期の時を家で過ごすことに決める。

東京についた界人は父親の篤に会う。
篤は東京で入れ墨の彫り師として働き、界人を快く迎え入れた。
夜、居酒屋で界人は、なぜ母親と別れたのか問い詰める。
篤は岬とは運命の出会いだったが、
共にいることではなく、離れていても長く繋がることも運命だと語る。
銭湯で入れ墨だらけの父の背中を流すのだった。

島に帰った界人と杏子は生きているヤギの血抜きの過程を手伝う。
ヤギを吊るし、首に傷を入れる。
ドクドクと血が流れるが、ヤギはなかなか死なない。
だんだん弱まるヤギの鳴き声に杏子はヤギの目を見続け、
魂が抜ける瞬間を、目を逸らさずに受け止めようとしていた。

岬がある日、髪を切った。恋人と電話しているところに界人が帰宅するが、
母親を見て、また家を出る。

ある朝、杏子から電話があった。
イサの最期を見届けるために、杏子の家に向かう。
家には地域に住む人々が来ていて、
イサの最期を明るく看取ろうと、歌って踊っていた。
イサは静かに息を引き取る。

その後、杏子は界人にセックスを迫ってくるが、
界人はまだ、その覚悟ができていなかった。
自分の不甲斐なさも入り混じる感情の中帰宅するが、
怒りを岬にぶつける。

界人はいつも男と遊びまわる岬を貶すような言い方で思いをぶちまける。
祭りの日、遺体として見つかった男は岬の恋人であることを界人は知っていた。
恋人が無くなった直後に、新しい男と付き合っていることが、界人は許せなかった。

次の日から、岬が忽然と姿を消した。
島には台風が近づき、海は大しけとなっていた。
暴風雨の中、界人は岬を探して外を走り回ったが見つからず、杏子の家に匿ってもらう。
徹は岬と界人が初めて奄美大島へ来た時の話をする。
家族が壊れ、界人も辛かったが、それ以上に岬は辛く、
その中で頑張ってこれたのは界人がいたからだと話した。

翌日は快晴となった。
界人は全力で自転車を漕ぎ、岬が働く飲食店へ行く。
店に入るや否や、界人は母を呼ぶ。
そして、親を守るのは自分だと泣き叫ぶ。
奥から岬が現れ、界人を抱きしめるのだった。

その後、界人は杏子と、ガジュマルの林の中でセックスする。
そして二人で、裸のまま海を泳ぐ。

ネタバレ徹底考察

奄美で展開される青春

今作で描かれた作品、舞台となるのは奄美大島で、
もちろん「自然」「海」というキーワードがある。

今回、それに組み合わせられたキーワードが「青春」

今作の主人公は高校生で、そんな奄美の高校生の日常を描いた作品となる。

一般人では考えられないような高校生活に、個性豊かな近隣住民、
それらに触れながらも成長していく彼らを見守るのが、
とても新鮮に感じてしまうような作品である。

今作の主役である杏子は、制服のままで海を泳いでしまう女子高生だが、
その光景が自然に溶け込んでしまうくらいの、映画の放つ雰囲気が今作の見どころだろう。

ちなみに、リアルの奄美大島の学生でも、制服のまま泳ぐという文化はあるらしい。
(真偽は不明)

命や死について描かれた描写

今作のテーマであるワードとして一番大きいものが「命」「死」であるが、
そんなテーマを引き立たせるのに多数の仕掛けがなされている。
「死」の描写として、一番大きな出来事は、「イサの死」であるが、
他にも、水死体ヤギの血抜きなど、たくさんの演出が練り込まれる。

ヤギ鍋を頬張るシーンや、荒れ狂う海のシーンセックスのシーンで、
今度は「命」が描かれる。
鑑賞者が気が付かないままに、命に触れるような演出ができている。

今作では奄美の映像にも力を入れた作品となっているが、
快晴の綺麗な奄美だけでなく、台風が襲う奄美も切り取り、
そういったカットも少なくはない量で盛り込まれていることも
仕掛けであると考える。

台風なのに帰ってこない母親や、それを探しに向かうカイトのシーンでも、
「死」を意識した視聴者も少なくは無いだろう。

今作のタイトルの意味とは

今作のタイトルの「2つ目の窓」
このタイトルに隠された謎を紐解くと、
「母から子へ受け継がれ、繋がっていく」という、
作中の表現が、一番しっくりくるだろう。

今作のキャッチコピーは、
「人生を全うした時に開かれる二つ目の窓」であり、
人生を全うしたイサ(一つ目)に繋がり、杏子(二つ目)が受け継いでいく。

今作のタイトルのメタファーとなった出来事は、
間違いなく「イサの死」ということである。

そんなタイトルの意味も理解しつつ、再度視聴してみると、
また違った気づきがあるかもしれない。