きっと、うまくいく【ネタバレありなし徹底考察】

本記事では、
前半で、映画紹介&見どころレビュー
後半で、ネタバレ解説&徹底考察を行います。

「きっと、うまくいく」

2009年、ラージクマール・ヒラーニ監督により制作されたインド映画。
公開当時はインド映画歴代興行収入1位を記録した大ヒット映画となった。
インドの工科大学を舞台とした青春劇。
上映時間は171分。

あらすじ

インドのとある町に住む「ファルハーン」「ラージュー」は、
9月5日に電話で、母校であるICE工科大学に呼び出される。
そこに待ち受けていたのは、
当時同じ大学であった「チャトル」という人物だった。

チャトルは大学時代、「10年後の9月5日、この場所で、どちらがより成功したかを見せ合う」
という賭けをある人物と交わしていた。
その人物は「ランチョー」
昔からランチョー、ファルハーン、ラージューは仲が良く、親友だった。
時は、そんな三人の大学時代に遡る。

出演役者

今作の主人公、映画のカギを握るランチョーを演じるのが「 アーミル・カーン」

 

3人の主人公の一人であるファルハーン・クレイシーを演じるのが、
「 R・マドハヴァン」

今作は彼の視点で物語が進む。

 

もう一人の主人公、ラージュー・ラストーギーを演じるのが、
「シャルマン・ジョシ」

 

本作のヒロインであるピア・サハスラブッデーを演じるのが、
「カリーナ・カプール」

見どころ①「軽いタッチの裏に隠される重大なテーマ」

今作の映画、ギャグ要素も多く、軽いタッチで描かれる作品となっている。
インド映画独特のミュージカルシーンも多く、明るい描写が多いが、
その中にも重大なテーマが織り込まれ、それを歌う描写も多い映画となっている。

テーマはズバリ「やりたいことをやる」
将来への不安を抱える大学生が主人公であるからこその目線の作品となり、
窃盗力を感じてしまう脚本に加え、今一度自分の本当にやりたいことを、
考えさせられるような作品となっている。

見どころ②「競争社会に叩きつける、この映画で描かれること」

作中で登場する大学は超難関工科大学。
いわゆる「スパルタ」という言葉がしっかり当てはまるような学校であり、
校内の競争も激しい。

そんな中で3人の主人公が、支え合いながら成長していく描写は、
この作品でしか描くことができない、
今までの映画で描かれなかったようなテーマが掲げられた作品だろう。
勉学や競争ばかりの社会に叩きつけられた、この一本、
学生の人にこそ観てほしい一本である。

配信コンテンツ

「きっと、うまくいく」は今現在、
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※ここからネタバレあらすじ

今作は3人の主人公のうち「ファルハーン」の目線で物語が描かれる。

インドのとある町に住む「ファルハーン」と「ラージュー」は、
9月5日に電話で、母校であるICE工科大学に呼び出される。
そこに待ち受けていたのは、当時同じ大学であった「チャトル」という
人物だった。
チャトルは大学時代、「10年後の9月5日、この場所で、どちらがより成功したかを見せ合う」
という賭けをある人物と交わしていた。
その人物は「ランチョー」
昔からランチョー、ファルハーン、ラージューは仲が良く、親友だった。
時は、そんな三人の大学時代に遡る。


父親からエンジニアになるように言われて育ったファルハーンは、
優秀な成績を収め、ICE工科大学に入学する。
しかしファルハーンは本当になりたかったのは「写真家」であった。
ICE工科大学の地を踏んだファルハーンは、寮で同室となった、
ラージューと知り合う。
ラージュの家は貧乏で、父親が寝たきりであり、
家族からのプレッシャーと日々奮闘していて、
お祈りを欠かさず、お守りを多数身に着けた青年だった。

その日、2人を含めた新入生は学校内で、先輩らによる「洗礼」を受けるが、
その洗礼に遅れてくる者が一人だけ居た。彼の名は「ランチョー」
洗礼を嫌がり、部屋に逃げ込むランチョー、
そんな先輩はランチョーに対して、
「ドアにおしっこをかける」という悪戯をするが、
ランチョーは部屋の中にあるもので、即席の放電装置を作り上げ、
逆に先輩たちを懲らしめる。
ランチョーは二人の同室の仲間となった。

 

ランチョーは上級生だけではなく、理不尽なことを言う教授や、
学長にすら負けることなく立ち向かう、反骨心が強い人間だった。
悪いことがあると、自身の座右の銘である「All is well.(うまくいく)」と聞かせ、
ポジティヴな性格を持ち合わせていた。

工学に関しては天才的な才能を持ったいたランチョーだったが、
ある日、ランチョーと似ているタイプの生徒とされていた、
4年生の「ジョイ・ロボ」が、首吊り自殺をしてしまう。
理由は、熾烈な競争を強いる大学の教育方針を苦に、
そのプレッシャーから、その競争から降りるという理由だった。

学園の学長であるヴィールーは、
通知表に記される成績や、就職率、順位などを重きに置いた教育思想を持っており、
「学問」ではなく「点の取り方」を教える教育を皆に押し付けていた。
その考えにランチョーは疑問を持ち、ヴィールー学長と真向から対立することとなる。

ファルハーンへとラージューはそんなランチョーに引き寄せられ何をするにも3人でいたが、
ある日、学長に、ランチョーに家は超大金持ちであり、貧乏な家庭で育ったラージューとは
境遇が違うと、説得する。
説得に応じてしまったラージューは二人を残し、部屋を移動するのだった。

そんなある日、成績優秀であるが、数字や順位に取りつかれたエリート生徒である、
「チャトル」という生徒が、学長を含む皆の前でスピーチをすることとなる。
ランチョーはラージューの同室となったチャトルから、ランチョーを救い出すため、
チャトルのスピーチ原稿を改ざんし、舞台で恥をかかせる。
その夜、憤慨したチャトルは三人の元へ赴き、
ランチョーにとある「賭け」を叩きつける。
それは「10年後の9月5日、この場所で、どちらがより成功したかを見せ合う」
というものだった。

ある日、ランチョーの元にラージューから電話がかかってくる。
それはラージューの父親の命が危ないという電話だった。
たまたま近くにいた医学生でヴィールー学長の娘である「ピア」の力を借りて、
ラージュの父親を病院に担ぎ込む。
一命をとりとめたラージュの父親をみて、ラージュは涙ながらに皆に感謝するのだった。
これを機に、3人の絆は確固たるものへ変化していく。
そしてランチョーの魅力に取りつかれたのは、この二人だけではなく、
学内で雑務をこなす少年マンモーハンや、ヴィールーの娘で医者を志すピアも、
ランチョーの競争社会に囚われない考え方に触発されていく。

そして1年のテストが行われ、成績が発表される時が来た。
ファルハーンとラージューはワースト1位と2位、
対してランチョーはチャトルを抑えて1位を獲得した。
その後行われた集合写真撮影の途中、
ランチョーと学長ヴィールーは、
「ファルハーンかラージューのどちらかが就職するか否か」を賭ける。

ある夜、三人は寮の外の階段で飲み明かす。
ランチョーはファルハーンに「写真家を目指したほうがいい」と言うと、
ファルハーンもランチョーに、ピアに告白しないことを指摘する。

その夜、三人はピアの家に侵入し、ランチョーは告白しようとするが、
家に悪さをするラージューが学長に見られてしまう。
翌朝、学長室に呼び出されたラージュは退学を宣言される。
泣いて許しを請うラージュであったが、
学長の出した条件は「ラージュかランチョーかどちらかの退学を選択する」
というものだった。

結局答えが出せなかったラージュは、学長室の窓から飛び降りる。
緊急搬送されたラージュは意識不明の状態が続いたが、
周りの仲間の頑張りで、奇跡的に復活を遂げる。

そしてランチョーは、ファルハーンにとあるプレゼントをする。
ランチョーはファルハーンの写真をこっそり送り、
その写真が評価され、尊敬する写真家から助手としてのスカウトを受ける。
しかし最大の難関は「父親に納得させること」であった。
社会への体裁を気にしてファルハーンをエンジニアへ仕立てようとする父親に、
ファルハーンは正面から向き合い、説得に成功する。
そしてラージュは、お守りの指輪を外し、車イスで面接へ赴く。
成績の不振を尋ねられ、自らの恐怖心を、先の自殺未遂を交えて告白する。
会社側に迎合しようとせず、自らの言葉を放ったラージューは感銘を受けられ、
その場で内定を得ることができた。

その後、ラージューへの復讐を目論むヴィールーは、
彼を卒業試験に落第させるために難解な答案を作成する。
ピアを通じてそれを察知したランチョーとファルハーンは答案を盗み出すが、
ラージュは自らの実力で合格してみせると意気込む。
しかし、盗みがヴィールーにバレてしまい、3人は即刻退学を言い渡される。
その夜、町は道路が浸水するほどの豪雨に見舞われる。

妊娠していたピアの姉がそのタイミングで破水する。
たまたま部屋を出るために荷物を出していた三人は、この場面に遭遇する。
病院へ搬送することはできず、大学の娯楽室で、多くの生徒を巻き込んでのお産を始める。
停電のため、即席の発電装置を作り、掃除機を用いた即席の吸引器を作り、
出産に成功する。
奇跡的な出来事の立役者となったランチョーはそっと場を去ろうとするが、
ヴィールーに呼び止められ、退学の取り消しを言い伝えられる。

その後、3人は無事卒業する。式の場で、ランチョーはそそくさと去っていった。
それから10年間、ランチョーとは連絡すら取ることができなかった。


10年後の9月5日、ランチョーはその場所には現れない。
二人はただ会いに、チャトルは「賭け」のために、
ランチョーを探しに行くこととなった。

今や企業の副社長であり、有名な科学者「フンクス・ワングル」との
契約に意気込むチャトルは、勝利を確信していた。

その後三人は、ランチョーの名前を頼りに家まで行くが、
そこに住んでいたのは、名前が同じの別人であった。
しかし、学歴や写真のすべては一致している。
そんな謎をもう一人のランチョーに説いてみると、
使用人である彼が、代わりに学校に行っていた事実を知る。

ランチョーは本名ではなかった。

真の住所を聞き出し、ランチョーの家に向かう途中、ピアに連絡を取ってみる。
結婚式間際であったが、まだランチョーが好きという気持ちを受け取った二人は、
ピアを車に乗せてランチョーのもとへ連れていく。

ランチョーは小学校で働いていた。
様々な発明品で遊ぶ小学生たちを見て、ランチョーに会えると確信する三人とチャトル。
海岸線には、子供たちと一緒にドローンを動かすランチョーの姿があった。
ピアはランチョーに駆け寄り、キスをして二人は愛を誓う。
ファルハーンとラージュは再会を大いに喜んだ。

すかさず、チャトルが駆け寄ってきて「敗北宣言書」を、
ランチョーに書かせる。
ランチョーはチャトルに電話をかける。
かしこまるチャトルは、
ランチョーこそが取引相手の「フンクス・ワングル」であったことを知る。

ネタバレ徹底考察

今まで描かれることのなかったテーマ

今作はインド映画歴代興行収入1位を記録した大ヒット映画であり、
公開当時は数々の賞も総ナメにしていた。

インド映画独特のミュージカルに合わさり明るく描かれたこの作品が
人気を得た理由、それは何といっても、映画のテーマ選定にあるだろう。

今作で問題として取り上げられたテーマ、それは「競争社会」である。
学生なら誰もが翻弄され、苦悩の渦中にある「勉学の競争社会」、
そして「プレッシャー」「若者の自殺」
「やりたいことをやらせてもらえない」など、
他の作品では描かれなかった問題にスポットライトを当てて描いている。

テーマごとの描写シーン
・競争社会
 テストの順位発表で群がる人々。
 ランチョーが落第したと思い込み落ち込むにも関わらず、
 1位だとわかっても落ち込む。

・プレッシャー
 テスト前にヘビや牛にお祈りする生徒達。
 ラージュの信仰心。

・若者の自殺
 ジョイ・ロボの首吊り自殺。
 ラージュの飛び降り自殺未遂。

ちなみに、事実インドの若者自殺者数は年々増えている現状もある。

ランチョーをはじめとする各キャラクターのバランス

今作の主人公であるランチョー、
なかなかに尖った性格で、上級生はおろか、
教授や学長にも屈しない人間性を持っている。

この長いものに巻かれない人間性に魅力を感じた鑑賞者も、
多いのではないだろうか。

今の日本人ではあまりできる人がいないような大胆さと性格、
日本という国民性に訴えてくるような作品であり、
この作品を人生のバイブルとして掲げる学生も多いだろう。

そしてランチョー以外の二人の主人公。
彼らのキャラクターも織り込まれた上でランチョーのキャラクターが引き立ち、
ランチョーにより二人のキャラクターも引き立ち、
非常にキャラクターバランスが取れた作品に仕上がっている。

日本以外で流行っている現状を見ると、
案外、外国でも同じ悩みは蔓延しているのかもしれない。

秀逸な作品構成テクニック

また今作は3時間という長さで、
映画の中でもとても長い作品に分類されるが、
そんな中でも飽きさせないようなテクニックがいくつも詰まっている。

第一に、作品構成として現代と10年前を交互に渡り歩き、物語が進行している点である。
この演出により、映画の演出バランスを調整すると同時に、
「現代の物語」を風化させない役目としても働いている。
かなりのボリュームの大学生活が描かれるが、ぶっ通しで過去が描かれると、
恐らく再会シーンでの感動は半減してしまっていたように感じるのだ。

そして第二に、ミュージカルシーン。
日常的にヒューマンドラマを観ない人たちや、人の行動や心理描写を描く作品を
あまり鑑賞しない人々も、今作が楽しめるようなトリックがここに詰まっている。
恐らくこのミュージカルシーンにより、ある種の「休憩」
そして「感情のリセット」の役目を果たしている。
これが幸にも不幸にも働くのが「インド映画」の特徴であるが、
今作はど真ん中にガッツリハマった作品となった。

絶大な人気による影響力と役者陣の頑張り

今まででも、まれにみるほどの大ヒットを果たした今作、
その実力は折り紙付きで、各著名人からも様々な評価を得ている。

映画の評価
・スティーヴン・スピルバーグが「3回も観るほど大好きだ」と絶賛
・ブラッド・ピットが「心震えた」とコメント。
・インド以外でも高い評価を受け、各国でリメイクが決定。
・日本では「Yahoo!映画作品レビュー」で1位。
・ぴあの調査による公開初週映画の満足度ランキングで1位となった。
・第37回日本アカデミー賞で優秀外国作品賞を受賞。

更に、本作のキーマン「ランチョー」を演じたアーミル・カーン、
大学生の役を演じたにも関わらず、当時の年齢はなんと44歳であった。

また、もう二人のファルハーンとラージューを演じた俳優、
R・マドハヴァンも当時39歳、シャルマン・ジョシも30歳だったという。

当初はもっと若い俳優を起用する予定だったが、
カーンは「是非やりたい。やらせてくれるなら若く見えるように体を絞る」と語り、
撮影期間中は肌をフレッシュにするため水を1日4リットル飲んで臨んだという。