本記事では、
前半で、映画紹介&見どころレビュー
後半で、ネタバレ解説&徹底考察を行います。
白ゆき姫殺人事件
2014年、中村義洋監督によって制作された作品。
原作となるのは、小説家「湊かなえ」による
同名小説である。
焼死体事件の謎を追う物語。
上映時間は126分。
あらすじ
舞台は長野県、
「しぐれ谷国立公園」内で、
メッタ刺しにされた焼死体が見つかる。
テレビ局と契約する映像制作会に務める「赤星雄治」は、
大学生の同級生である「狩野里沙子」からの連絡で
事件の謎をスクープしていく。
浮かび上がったのは、
確実に犯人であると思われる人物だった。
出演役者
今作の中心に立つ、
映像制作の仕事を受け持つ「赤星雄治」を
演じるのが「綾野剛」
今作の被害者「三木典子」を演じるのが
「菜々緒」
三木典子と同じ職場で働く「城野美姫」を演じるのが
「井上真央」
同じ職場の後輩である「狩野里沙子」を演じるのが
「蓮佛 美沙子」
見どころ「湊かなえの作風を周到した現代的ミステリー」
今回の原作となるのは2012年に、
小説家である湊かなえが出版した同名小説であるが、
湊かなえ独特の「暗さ」や「鬱」を匂わせる
世界観はそのままに再現された。
殺人事件ミステリーでありながら、
事件とはどこか別の「闇」を感じてしまう描写が多く、
キャスティングされた役者たちも
迫真の演技をした作品だっただろう。
配信コンテンツ
「白ゆき姫殺人事件」は今現在、
Amazonプライム、NETFLIX、Hulu、等で配信されている。
ネタバレあらすじ
舞台は長野県、
「しぐれ谷国立公園」内で、
メッタ刺しにされた焼死体が見つかる。
テレビ局と契約する映像制作会に務める「赤星雄治」は、
大学生の同級生である「狩野里沙子」からの連絡で
事件の謎をスクープしていく…。
全国的な事件として有名になっていたが、
なんと狩野は被害者である「三木典子」と
同じ職場で働いていた。
情報収集に奔走する赤星は、
次々と情報を入手していきながらも、
自身の持つ情報を、Twitterに投稿するのだった。
被害者である三木の周辺人物から洗っていくうちに、
一人の容疑者が浮かび上がる。
その名は「城野美姫」
一見パッとしない容姿であり、
大人しい性格の女性だった。
そして、彼女は事件の後から失踪していた。
SNSを更新しながらも、
犯人を追い詰めていくうちに、
城野のことを犯人と断定した赤星は、
ワイドショーTV番組で
事件についての特集を任されることとなる。
番組内でも、城野が犯人であるという
ニュアンスが多い番組となり、
城野の周辺人物までにも
取材は行われるのであった。
そしてTVやSNSで、
城野が犯人であると日本中に認知されていったのだった。
一方、事件の中心に居ると思われた城野は、
ビジネスホテルでの生活を送っていた。
連日のニュースや、自身が叩かれるSNSに
耐えられなくなった彼女は、
「自殺」を決意する。
死ぬ前に「遺言書」を残そうと考えた彼女は、
ノートに真実を記していく。
しかし、城野美姫は無実だった。
数々の証言から得られた、彼女が犯人である証拠は、
全てが騙され、陥れられた出来事だったのだった。
その真犯人は他でもない狩野里沙子だった。
城野の気の弱さに付け込み、
狩野は赤星とメディアを利用し、
犯人をでっちあげる計画を持っていたのだった。
ほどなくして狩野は捕まることになり、
首を吊ろうとした城野は
たまたまニュースが目に入り、
思いとどまるに至るのだった。
「ガセネタ」を掴まされた赤星は、
今度は逆に、
リアルやネットの世界から迫害されるようになる。
城野の実家にも謝りに行くが、
許してもらえるはずもなかった。
意気消沈し、歩いていた去り際、
城野本人と接触するが、本人だとは気が付かず
お互いの名前も知らぬまま励まされる。
城野は意気揚々と車で走り去っていくのだった。
ネタバレ考察
物語の中心は現代的問題「SNS」
今作のキーマンともなる城野であるが、
赤星が結果を求めていくにつれて、
どんどん追いやられていく。
最後は首吊り自殺をしようとする城野であったが、
その行動に至る引き金を引いたのは、
紛れもなく「SNSにおける誹謗中傷」だろう。
SNSにおける誹謗中傷は今まさに日本、
しいては世界が抱える問題であるが、
今回の物語の中心のテーマとして
SNSにスポットライトを当てたタイムリーな脚本こそ、
本作の見どころだろう。
作中にTwitterのつぶやき等が
映像やセリフとして出てくる描写は
三浦大輔監督の「何者」でも描かれたことで記憶に新しい。
主人公と思われたキャラクターの逆転現象
本作の冒頭、映像を手がける赤星、
そして結果として犯人だった狩野が登場し、
物語は始まる。
どの角度から見ても「第三者」的な
立ち位置から物語を見せておいて、
そこから確信に迫る演出は、
誰もが想像できないような
仕掛けとなっているだろう。
そして犯人としての立ち位置だった「城野美姫」
三木に受けた彼女の屈辱も、
ある一定数の人々には痛いほどに
理解ができたのではないだろうか?
マイナーミュージシャンである
「芹沢ブラザーズ」が、人知れず三木に知れ渡り、
そのままファンとして活動を始める三木のシーン、
その他の数々の演出によって、
城野がだんだんと犯人から遠ざかっていくことが
とても自然に起きている。
真犯人であることを、
微塵も匂わせない彼女のキャラクター設定、
そして周辺人物の情報など、
本作は鑑賞者をも、
全力で騙しに来ている作品だったのだ。
そんなことからも、
本作で重要となるのは
何と言っても「聞き込み調査」の描写だろう。
一人一人の考え、情報、伝達の違い
赤星がスクープを撮るため、
城野の周辺人物に聞き込みを行う描写であるが、
同じ出来事でも一人一人の
意見が違っている描写が多数出てくる。
皆が「自分の良いように喋る」ことによって、
皆の証言により、幾度となく再現される映像も
少しずつ違う描写となるのだ。
話している本人は、
決して嘘をついているつもりがない。
そんな人間の「記憶の改ざん」も
リアルに描かれる作品となった。
まるで伝言ゲームをしているかのような、
その物語の変わりようは、
人間の闇を描くような面白い演出となっている。
情報に振り回される現代を描く。
今でこそ世間で騒がれる「マスコミ」という存在。
それは「マスゴミ」とも揶揄され、
今も尚、日本中を炎上に導く媒体である。
本作は、そんなマスゴミに対しての、
強烈なアンチテーゼ作品であり、
これまでに観たことが無い描写の作品となった。
真犯人が「マスコミ」を利用することによって
犯人をでっちあげる構図は、
決して「非現実的」ではないことだったのだ。
そして、世間の「手のひら返し」に対しても、
強烈なメッセージ性が詰まっている作品となる。
「城野美姫」が犯人だと謳われていたころは、
リアル、SNS共に、城野の誹謗中傷が始まるが、
真犯人が逮捕されると、
人が変わったように同情の目に変わる。
集団心理の恐ろしさ、SNSの恐ろしさ、
マスコミの恐ろしさなど、
情報に振り回される現代社会を
見事に描き切った作品となった。
また原作となる湊かなえの小説では
少し違った物語となるので、
こちらも是非読んでみてほしい。