「グリーンブック」のネタバレ感想と考察【黒人ピアニストが危険な迫害ツアーを巡る】

  • 2021年6月3日
  • 映画
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本記事は、映画「グリーンブック」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。

鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。

グリーンブック

2018年、ピーター・ファレリー監督によって製作された作品。

実在するジャマイカ系アメリカ人の黒人ピアニストのドン・シャーリー、そしてシャーリーの運転手兼ボディガードを務めたトニー・ヴァレロンガの物語。

上映時間は130分。

あらすじ

舞台はアメリカ、1962年、アメリカでは「ジム・クロウ法」と呼ばれる人種差別が州の条令として蔓延っていた。

ニューヨークのナイトクラブで働くイタリア系アメリカ人のトニー・ヴァレロンガは、改修工事のために店が閉鎖されている間新たな仕事を探すが、なかなか思う仕事が見つからない。

そんな最中に友達に紹介されたのはジャマイカ系アメリカ人のドン・シャーリーの運転手としての仕事だった。

シャーリーは黒人でありながらも一流ピアニストであり、アメリカ合衆国南部「ディープサウス」コンサートツアーへと挑もうとするのだった…。

出演役者

本作の主人公、白人の運転手トニーを演じるのが「ヴィゴ・モーテンセン

本作の主人公であり、クセの強いトニーのキャラクターを見事に演じ切った。

本作以外でも「ロードオブザリング」シリーズやアメリカのテレビドラマなどでも活躍する俳優である。

 

本作のもう一人の主人公、シャーリーを演じるのが「マハーシャラ・アリ

「ベンジャミンバトン」「ムーンライト」などのヒューマンドラマへのキャスティングが多い。

その他も「スパイダーマン」シリーズやシーズンドラマの「ハンガーゲーム」などにも出演する。

本作では、堂々とした威厳ある雰囲気を纏い見事にシャーリーを演じ切った。

ネタバレ感想と考察

全てが事実の物語!どこまでがリアルなのか!?

本作の映画の冒頭で「物語が事実に基づく物語であること」が大々的に言及されるが、いったいどこからどこまでが本当なのだろうか?

無論、「映画」であることを垣間見ても、フィクションである要素は含まれていたが、細かな演出から本作は真実の物語であることがわかっている。

・ディープサウスでの2ヶ月間のコンサートツアー。
 まず最初に、本作のプロットにもなっている「ディープサウスでの2ヶ月間のコンサートツアー」、
 これは紛れもない事実である。
 シャーリー自身が発案し、トニーを雇って旅に出るわけであるが、
 その大まかなプランは全てが本物である。
 その一方で、映画中では「8週間(2ヶ月)の旅」との設定で、無論、実際も同じプランであったが、
 実際の旅ではなんと一年と半年間にも及ぶ旅となってしまったらしい。

 

・シャーリーが住む家について。
 映画中、シャーリーは「カーネギーホール」という劇場の上に住んでいたが、
 これも紛れもない事実である。
 なんと彼は、ホール上階に50年以上も住み続け、
 年一回はホール内でのコンサートを行ったそうだ。

 

・トニーとシャーリーが警察に捕まるシーン。
 衝撃的なのが「トニーとシャーリーが警察に捕まるシーン」、
 これが紛れもない事実であることだ。
 JF・ケネディの采配によって牢屋から出してもらうところまでもが
 真実であることがなのよりの驚きだった。

 

・トニーが警官を殴った行為について。
 また、牢屋に入ったきっかけとなる「トニーが警官を殴った行為」についても真実であると言われ、
 トニーが最初は「黒人差別主義者」であったこともトニーの実の息子であるニックが語っている。
 ちなみにニックは、本作の映画にも脚本で携わっている。

 

・トニーの手紙について。
 作中でもトニーは家内のドローレスに万通もの手紙を書いているが、
 これも真実である。
 また、手紙の文章をシャーリーが手伝っている描写があるが、
 これも本当のことである。

 

・シャーリーが同性愛者であることについて。
 映画の作中、警察に捕まったシャーリーが男を買うシーンがあるが、
 シャーリー自身が「同性愛者」であったことは本当であると語られている。
 しかし、そこで警察に捕まったという事実は残されていない。

大きな物語の「起承転結」は大体が事実として描かれているが、細部にまでわたり物語が事実に沿って演出されているのがまた面白い。

映画の中盤、トニーがピザを切り分けず丸ごと頬張っている描写も真実であり、旅の途中「ケンタッキー・フライドチキン」に寄る描写すらも真実である。

またその一方で、実際は「ジャズピアニスト」であったシャーリーは、映画よりもナイトクラブ等での演奏が多かったとされている。

しかし、煙草の煙やピアノに置かれた酒などが好きではなかった描写は本当のことである。

シャーリーの真意に触れることこそ本作の最大のテーマ

シャーリー自身が超一流のピアニストであったことはよくわかったが、それではなぜ、ディープサウスのコンサートツアーに出かけたのだろうか?

当時のアメリカの情勢から紐解いてみよう。

当時のアメリカでは、「ジム・クロウ法」と呼ばれる、人種差別に関する州の条令が定められていた。

・ジム・クロウ法
 1876年から1964年にかけて存在した、人種差別的内容を含むアメリカ合衆国南部の州法で、
 主に「黒人の一般公共施設の利用を禁止、制限した法律」を総称したもの。
 アメリカに古くから存在する、白人が黒人に扮して歌うコメディ、
 ミンストレル・ショーの劇中歌である「ジャンプ・ジム・クロウ」からもじった名前である。

そして、映画に舞台にもなっている「ディープサウス」、これはアメリカ南部の中の文化的、地理的な下位地域区分であり、「ジム・クロウ法」が色濃く残った地域としても有名だった。

ドン・シャーリーは「あえて」この地域をツアーの舞台に選ぶという勇気を持って臨んだのだ。

旅の理由を問われて、ドン・シャーリーは「黒人の地位を上げるためである」と語っている。

事実、シャーリーは作中でも、数々の差別に屈しないまま、見事にツアーをやり遂げるが、「1962年に黒人がアメリカ南部へ旅行に行く」という行動自体が、とんでもなくリスキーで勇気のある行動であることがよくわかるだろう。

そして、かつてのシャーリーの偉業は、今現在も色濃くアメリカに多大な影響をもたらしている。

本作の映画が「アカデミー作品賞」に受賞し、主演の一人であるマハーシャラ・アリが、助演男優賞の受賞するほどの作品のなっていることがいい例だろう。




「グリーンブック」の存在について紐解いてみる。

本作のタイトルにもなっている「グリーンブック」

ジム・クロウ法の渦中「黒人が泊まれる宿」を記した本として登場するが、もちろんこれも実際に存在する。

…と同時に、こんなものが存在することに衝撃も覚えてしまっただろう。

この本、正式名称は「黒人ドライバーのためのグリーン・ブック」であり、ニューヨーク市の郵便集配人であったヴィクター・H・グリーンによって自動車で旅行する黒人のために米国で創刊された本である。

当時の状況を振り返ってみると、なんとそれは映画よりも悲惨であり、宿に留まらず、ガソリンスタンドや自動車整備工場でも迫害を受けたようだ。

このグリーンブックには、黒人が泊まれる宿泊施設以外にも、上記に挙げた黒人が利用できるガソリンスタンドや自動車整備工場も記され、「ジム・クロウ時代における黒人旅行のためのバイブル」となっていた。

また皮肉なことにアフリカ系コミュニティの外部では、この本の存在すらも殆ど知られず、本映画でその存在を知ったアメリカ人の人々も多数居たようだ。

 

映画としての本作の評価は…?

アメリカの人種差別の観点から、とても重要な作品であることはよくわかったが、それでは「映画」としての評価はどうなっているだろうか?

本映画は、アメリカの有名映画サイト「Rotten Tomatoes(ロッテントマト)」100点満点中79点の好成績を残しているようだ。

その一方で、本作にも「賛否両論」がある作品であるとの見方もできる。

同じ時期に公開された黒人差別に切り込んだ作品「ブラック・クランズマン」の監督であるスパイク・リー監督や、また同じアクション映画「ブラックパンサー」の主演を務めたチャドウィック・ボーズマンも酷評している。

ちなみに上記の二人ともが黒人であるが、本策の監督ピーター・ファレリーは生粋の白人であり、そんな白人目線での黒人の描かれ方に違和感を感じてしまう鑑賞者も多かったようだ。

評価は人それぞれであるが、本作を「人種差別」ではなく、「伝記映画」として鑑賞した時の評価は変わってくる。

音楽関連でも「ボヘミアン・ラプソディ」「ロケットマン」など、数々のミュージシャンを題材とした伝記映画があるが、その中でもよりリアルで、より洗練された脚本が組み込まれた作品となっているだろう。

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