本記事は、映画「ガール・オン・ザ・トレイン」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。
鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。
ガール・オン・ザ・トレイン
2016年、テイト・テイラー監督によって製作されたアメリカのサスペンススリラー作品。
本作はポーラ・ホーキンズが2015年に執筆した同名小説を原作としている。
上映時間は105分。
あらすじ
舞台はアメリカ、数カ月前に離婚したレイチェルは職すらも失い、当てもなく電車に乗る毎日を過ごしていた。
かつて自分が住んでいた家も車窓からは確認でき、元夫であるトムと、トムの新しい妻であるアナの夫婦を見てはやるせない気持ちに苛まれていた。
レイチェルとトムは「不妊」に悩み、別れる決断をしたのだった。
そして、レイチェルは酷いアルコール中毒を患っているのだった…。
出演役者
本作の主人公、レイチェルを演じるのが「エミリー・ブラント」
イギリスの容姿端麗な女優で、「プラダを着た悪魔」などの有名作品に出演している。
また「クワイエット・プレイス」などのホラー作品にもキャスティングされ、数々のジャンルで活躍している。
レイチェルの元旦那であるトムを演じるのが「ジャスティン・セロー」
アメリカ出身で、数々の映画作品に出演する有名俳優。
主にヒューマンドラマや恋愛作品へのキャスティングが多い俳優であるが、「スターウォーズ」シリーズや「ジョーカー」といったアクション作品にも出演している。
トムの新たな妻であるアナを演じるのが「レベッカ・ファーガソン」
スウェーデンの女優であり、本作品にキャスティングされた役者の中では出演作品本数が最も少ない役者であるが、「ミッションインポッシブル」シリーズや、「メン・イン・ブラック」シリーズ、「グレイテスト・ショーマン」、「ドクター・スリープ」といった有名作品へのキャスティングが多い女優でもある。
トムとアナの夫婦のベビーシッターとして雇われるメガンを演じるのが、「ヘイリー・ベネット」
アメリカ合衆国の女優であり多数の映画作品の中でも、音楽に精通した作品へのキャスティングが多い女優である。
他にもヒューマンドラマや恋愛作品に多くキャスティングされる。
ネタバレ感想と考察
これが物語の根底!?ドロドロすぎるメンヘラ映画
本作のタイトル、そしてパッケージから見ても、どこか哀愁感を感じるおしゃれな作風に見えがちであるが、本作の物語の根底が昼ドラのような「ドロドロ映画」であることを忘れていけない。
本来では「正義」としての立場を確立し、主人公的立ち位置に立つ人物が「アルコール中毒のメンヘラ」というぶっとんだ設定である。
そんな主人公のレイチェルをはじめとし、本作の物語において「正常」な人間が登場しないことが本作の面白い点でもあるだろう。
登場人物の誰もがそれぞれの「欠落」を持っていて、そんな姿をひた隠しながら生活を続ける、リアルな関係性が描かれる点がこの「ドロドロ感」を演出する要因になっているのだ。
レイチェルは「アル中」、トムは「色魔」「サイコパス」、メガンは「浮気性」、スコットは「DV夫」、結果として物語の最初に一番の「敵」として描かれた、トムの妻である「アナ」が一番「まとも」な人物に見えてきてしまうだろう…笑。
また、そんなアナもトムとのキスの瞬間、どことない躊躇を見せるのもなかなかにリアルで闇深い…。
「アルコール中毒」へのアンチテーゼ作品
本作一番の問題要素として取り上げられたのが主人公レイチェルの「アルコール依存症」要素であるだろう。
彼女の酒癖の悪さが終始裏目に出てしまう脚本に見えつつも、全ては「失われた記憶」がトムによって捏造されている点がキーポイントとなっていた。
鑑賞者目線では、その全てが「真実」として映ってしまうような回想が流れるが、それらが「妄想」であったことに「衝撃のラスト」を感じさせる終わり方となっていただろう。
捏造されたすべての行為において覚えておらず、それを「真実」として受け入れてしまうレイチェルの弱さが全面に引き出され、「アルコール依存症」の本当の恐ろしさを感じさせる作風ともなっている。
本当に酒は恐ろしい…。
一人一人の人間ドラマがジワジワと紐解かれていく作風
レイチェルが「アルコールによる記憶喪失であること」をきっかけとして、一人ひとりのキャラクターの境遇が霧がかったような演出が続くが、物語の進行に比例して、どんどんと明るみになっていく演出も面白いものとなっていた。
明るみになっていく各キャラクターの境遇もかなりディープに設定が決められ、過去を遡るような描写で掘り下げられていく演出こそが本作の真骨頂ともなっている。
主人公がレイチェルでなく、「メガン」であっても、あるいは「アナ」であっても作品として成り立ってしまうのではないだろうか?
もし、本作品の主人公が「アナ」であり、レイチェルが「息子を狙うアル中女」としてのキャラクター性でも面白い映画となっていただろう。
本作一番の重要なプロット、「車窓」について
「アル中記憶喪失」であるレイチェルが物語の核心に迫っていく中で、大きな情報の中心としていたのがトンネルのシーンであるが、それ以外にも本作の最重要ファクターとなるべき演出が隠されている。
それこそが本作のタイトルにもなっている「電車(トレイン)」、そして物語のきっかけとなる「車窓から見える景色」で、これらが機能し指し示す方向性となっていたのが「情報の制限」という効果である。
視覚的にも一瞬の情報であり、「アル中記憶喪失」も相まって、その一瞬の描写から様々な想像ができてしまうことに本作の面白さを見出すこともできる。
wikipedia(ウィキペディア)では、本作のジャンルは「スリラー映画」ともなっているが、本作がスリラー作品として演出される最大のプロットがこの「車窓」の存在であると感じている。
「小窓から覗く」あるいは「覗かれている」という状況設定がこの「ホラー感」の演出に結びついた要因にもなっているだろう。
また同じく「窓」を恐怖のプロットとした作品「ネイバーインザウインドウ」もドロドロとした人間的恐怖を与えてくれる作品となったので、鑑賞してみるといいだろう。
実は賛否両論だった本作の評価!?
本作を鑑賞した鑑賞者ならわかるであろうが、本作は「スリラー作品」とは謳ってはいるがその真実は少し異なる…。
そんな本作の「スリラー作品」としての在り方に厳しく評価する人も多いようだ。
映画批評集積サイトの「Rotten Tomatoes(ロッテントマト)」では、支持率は43%と決して高いものではなく、「エミリー・ブラントの卓越した演技を以てしても、登場人物の設定に依拠しすぎたメロドラマへと転落することを防げなかった。」との意見もある。
これだけの「ドロドロ要素」があれば、こんな意見も頷いてしまうだろう…。