本記事は、映画「ドント・ヘルプ」のネタバレを含んだ感想と考察記事です。
鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。
ドント・ヘルプ
2017年、ギジェルモ・アモエド監督によって製作されたメキシコのパニックホラー作品。
アモエド監督はイーライ・ロスと共に「グリーン・インフェルノ」などを作り上げた脚本家としても有名。
悪魔に取りつかれた女の子とエクソシストの物語。
上映時間は94分。
あらすじ
舞台は現代、ローマ教皇14世が逝去した夜、カミラとマリア、そしてアニータの三姉妹は上院議員の豪邸に強盗に入る。
見事に議員のホセ、そして妻のアンジェリカを人質に取り、強盗に成功するが、地下に監禁される一人の少女を見つけるのだった。
少女の監禁を見過ごせない三人は、少女を助けようとするが…。
出演役者
本作の主人公、三姉妹の次女であるマリアを演じるのが「マリア・エボリ」
荒れた三姉妹の唯一真面目な次女を演じる。
本作以外に出演している作品は見つからなかった。
三姉妹の長女であるカミラを演じるのが「バネッサ・レストレポ」
物語の進行を担当するキャラクター、荒れた長女を演じている。
彼女もまた、本作以外の作品はヒットしなかった。
三姉妹の三女、アニータを演じるのが「カルラ・アデル」
鼻ピアスをしている三女を演じるが、いわゆる「咬ませ犬」的キャラクターとなってしまった。
彼女も本作品以外ではヒットしなかった。
それ出演役者たちも「ベテラン」と言えるような役者は出ていなかった。
ネタバレ感想と考察
「ドント」シリーズの再来!?ベタベタな脚本を楽しむ。
本作品、言わずと知れたB級ホラー作品「ドントブリーズ」に似ているタイトルからも、その作品をイメージしていた鑑賞者も多かったのではないだろうか?
実際、「屋敷に潜入」といった演出や「一人ずつ死んでいく」という脚本など、ドントブリーズを含めたベタベタなB級ホラーの展開が本作でも織りなされる。
「ドントブリーズ」はB級とは思えないほどの面白脚本が人気を博し、「人間的恐怖」が描かれた作品として、B級ホラー作品の旋風を巻き起こした作品であるが、そんな「ドント」シリーズとは似て非なる作品となっていたが、「ドントブリーズ」で描かれるのが「人間的恐怖」なのであれば、本作「ドントヘルプ」はいわば「幽霊的恐怖」で、より従来のホラー作品に近い造りとなっていたのが特徴的な作品となっていた。
大まかな物語の流れは似たものとなっているので、そんな「ベタベタのB級ホラー展開」を楽しむ作品となるのかもしれない。
現代版「エクソシスト」…恐怖の落としどころの違い。
有名ホラー作品として名高く、大きなプロットとして類似している作品が1973年に公開された「エクソシスト」であるが、こちらの作品では、本作品とは違う恐怖の形が映し出され、階段を逆さに降りてきたり、首が180°回転したりと、ホラー作品としてインパクトある演出が多い作品だった。
一方の本作では、そんな「エクソシスト」と全く同じプロットであるが、よりビジュアライズに洗練され、インパクトを抑えたスマートな作品であったことがわかる。
映像の衝撃度では、「エクソシスト」を上回ることができなかった作品であるが、過去のホラー作品にはなかった、登場人物たちのバックグラウンドを掘り下げた作風であったのが面白い要素となっていた。
本作の恐怖の核となる「悪魔」であるが、登場人物たちの精神をのっとる以外にも、トラウマとなる過去を掘り起こし、暗示をかけるような行動も多かった。
そんな「登場人物でしか知るはずのない物語」を身ぐるみ剥すことによって、「パニックホラー」だけではなく「サスペンス」や「ヒューマンドラマ」の一面にも切り込んだ作品とも捉えられるだろう。
主人公のマリアをはじめとする、三姉妹の関係性や性格、身なりの違いが伏線として露になる脚本の進行は、斬新な面白さを与えてくれた。
また、本作品のパッケージでの謳い文句として「あのイーライ・ロスが認めた!」との見出しが掲げられていたが、イーライ・ロス監督は1998年より、現代ホラーの第一線で活躍するパニックホラー映画の監督であり、彼の代表作である「グリーン・インフェルノ」の脚本家として、本作の監督であるギジェルモ・アモエド監督が脚本を書いたことが由縁となる。
この「グリーン・インフェルノ」であるが、今までに描かれたことが無いホラー作品の在り方として人気を博した作品となった。
物語の伏線とラストのオチ
前述したとおり、本作の物語ではホラー描写だけではなく、登場人物の境遇をも紐解いていく作品であるが、主人公である三人の関係性にこそ本作の「伏線」が隠されていた。
関係の詳細としては、カミラは父に「性的虐待」を受け、マリアも「虐待」を受けていたという事実を元に展開され、そして三女とされいたアニータが近親相姦によるカミラの娘だった…というオチである。
それを踏まえたうえで、映画冒頭、車の中でカミラがマリアに「薬」を薦めた際、アニータにはなぜか渡さなかったことを考えると「娘を気遣った行動」であったことがわかるだろう。
また、どこかヤンキーチックに育ったカミラに対してマリアだけが至って真面目であったことも、「虐待」のバックグラウンドを紐解くと浮き彫りになる物語となっていた。
そして映画のオチとして、映画冒頭で「ローマ教皇14世」が死去したことが語られ、物語のラストで一緒に戦った牧師が新たなローマ教皇として迎えられるが、その笑顔の切り取り方から「悪魔が牧師に乗り移った」と考えるのが自然だろう。
真偽のほどは定かではない…が…。
流石に多すぎる…「ツッコミどころ」
あのイーライ・ロスとタッグを組んだアモエド監督の作品として期待が集まった作品ではあったが、フタを開けてみると、いい評価を持てない鑑賞者も多かったようだ。
なんと言っても、脚本の粗さと、多すぎるツッコミどころがあったことは否めない。
主人公サイドの「お金が必要」という動機にそぐわない行動が多いことをはじめ、両手両足を椅子に拘束され「少女を助けるな!!」と叫び続ける夫妻も真相だけは一切語ることなく、アニータは「姉の娘であること」を知っただけで首つり自殺、さらには、カミラの死因は「悪魔の存在」など一切関係が無い事故死ときている。
本作を「B級ホラー」と割り切り一人ずつ登場人物が消えていく脚本を噛み砕いたうえで、その「死因」が雑に描かれていたのは少し残念な点だろう。
有名映画サイト「Filmarks(フィルマークス)」では、本作の評価は「2.7」とあまり高くない評価となってしまっているのも頷ける。
レビューを読んでいると、やはり題名が類似している「ドントブリーズ」やイーライ・ロスの「グリーン・インフェルノ」と比べたコメントが多くなっている。
アモエド監督の次回作に期待したい。