本記事は、映画「アンダー・ザ・シルバーレイク」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。
鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。
アンダー・ザ・シルバーレイク
2018年、デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督によって制作された作品。
彼は2014年に注目を集めた「イット・フォローズ」を監督した人物としても有名。
ロサンゼルスのシルバーレイクを舞台に繰り広げられる物語。
上映時間は139分。
あらすじ
舞台はロサンゼルス、シルバーレイク。
富豪と貧民が交差するこの街で、一人の青年サムは冴えない日々を送っていた。
ある日、犬の散歩をするサラに一目惚れし、仲良くなる。
しかし、一日で彼女は引越し、失踪してしまうのだった…。
出演役者
本作の主人公サムを演じるのは「アンドリュー・ガーフィールド」
物語のほとんどが彼の目線で描かれる中、プレッシャーに負けない強い演技が印象的だった。
俳優としても有名で、「アメイジングスパイダーマン」シリーズなどの主演を務めるほどの人気俳優。
本作のヒロイン、サラを演じるのが「ライリー・キーオ」
アメリカのモデル兼、女優でもあり、映画のみならず、アメリカのテレビドラマでも活躍している。
数多くの出演作品の中でも、サスペンスやスリラー作品への出演が目立つ女優で、あの「ハウス・ジャック・ビルド」へのキャスティングも有名である。
ネタバレ感想と考察
「考えたら負け??」
「考察」という二文字だけで済ますには内容が濃すぎるくらいの伏線やトリックが入り交じる本作であるが、煙に巻かれて、「映画のそもそもの土台の脚本」すらも忘れてしまいそうになる。
本作は「主人公サムが、暗号を解き明かし、愛するサラを見つける物語」である。
まずはこれを念頭に置いて鑑賞しなければ、5分で置き去りにされてしまうだろう…。
本作で最も特質的な点だったのが、「暗号の内容」である。
日本人には感慨深い「任天堂」の文字やゲームソフトの数々、そして「フリーメイソン」のような存在を意識させる世界を巻き込んだ陰謀論へと発展していく。
この記事を書き上げるまでに色々な考察ブログを読んできたが、筆者もイマイチ理解することができなかった。
そんな人々もこの記事にたどり着いたのではないだろうか??
今回は、そんな人々のための考察記事として書いていこうと思う。
何故わかりずらい…??数々のトラップがあった…。
「暗号」の解読に走る主人公サムであるが、そんな物語の進行を見ていてもイマイチ納得ができずに進む物語の形だった。
(これを感じ取った人も多いだろう。)
「雑誌の中のサブリミナル」「任天堂のゲームマガジン」「お菓子のオマケの地図」その他も数々の暗号へのカギが多かったが、「暗号の解読には関係性が無い要素」が多いのがその原因となっていたのだ。
まず挙げたいのが「犬殺し」についてだ。
映画冒頭にも登場し、本作の本質的テーマとしても考えることができる要素であるが、映画内では「シルバーレイクの都市伝説」として犬殺しの存在があった。
無論、これは「暗号の解読」とは全く関係しない要素であった。
このような表現が随所に見られる脚本なので、これが鑑賞者を煙に巻く要素となっているだろう…。
他にも「フクロウのキス」や「ドラキュラと七人の花嫁」など、何やら意味ありげな演出が数多くされている。
一言で言ってしまえば「情報量が多すぎる作品」である。笑
ここからは、こんな映画の伏線にもなっているこんな要素を簡潔に考察していこうと思う。
まず初めに、本作の舞台はロサンゼルスのシルバーレイクであるが、「富豪」と「貧民」が混在する街として、「境界線」を意識した脚本となっている。
そもそもの話であるが、本作のロバート監督は前々作の「アメリカン・スリープオーバー」でも、前作の「イット・フォローズ」でも、この「境界線」を意識した作品を作っているのだ。
この要素はここから先の数多くの演出に入り込んでくることになる。
映画の冒頭から最後まで絡んでくる伏線であったが、これにはどんな意味があったのだろうか?
まず確定的なのは、作中で犬が殺されたり、女性が犬の鳴き声だったりする要素は、「サムの幻覚」であると考えていいだろう。
それではサムは、なぜこんな幻覚を見たのだろうか?
映画の作中では一人の女性が「犬を殺せるなら人も殺せる」と発言するシーンがあるのも気になるが、ここに関係するのが先ほどの「境界線」を意識した演出とも考えられる。
説の一つとしては「サムが犬殺しだった」という説もあるほどなので、考察は無限大である。
本作一番の考察要素がこれだろう。
まず挙げたいのが、これが「幻覚」ではなく、「現実かもしれない?」ということだ。
フクロウの姿をした女性が「真実を知ろうとする者」を自殺に見せかけて殺害する、比較的わかりやすい考え方もできる。
その反面、フクロウ自体を「自殺」のメタファーとしている可能性もある。
真実に近づこうとすると「自殺」してしまう仕掛けがあったのかもしれない…。
映画の冒頭から「臭い」と声をかけられ続け、途中で「本物のスカンク」に臭いをつけられてしまう。
ここでの謎は「なぜスカンクに会っていないのにサムは『臭い』と言われた?」ということだろう。
ここでも「境界線」が関係してくるとも考えられる。
貧富の差をそのまま「臭い」に投影させた結果なのかもしれない。
サムが追いかける女性、ロックバンドの女性、そして娼婦の女性、全てが3人組であることも大きな伏線となっている。
これはキリスト教の教義である三位一体を匂わす要素と考えられる。
これ以外にも、かなりの量の「暗号解読に関係のない伏線」が入っているが、ここからは「暗号」について考察してみる。
暗号に関係する伏線の数々!!
ここからは時系列順に暗号の解読に関係する伏線を考察していこう。
まず物語の最初、サラが失踪してからの初めての暗号、「ひし形の暗号」である。
物語の序盤、そして中盤は「アナグラム形式」の暗号が多いことがわかる。
1ドル紙幣のフクロウなども、「フリーメイソン」や「イルミナティ」を思わず意識してしまう暗号だった。
そして物語は進展する。
日本人なら誰でも意識してしまう伏線、それが「スーパーマリオ」や「ゼルダの伝説」が作中に登場することだろう。
これらが暗号解読のカギにもなっているが、同時に「暗号解読していくサムの姿」を「RPG系のゲーム」にも投影させることができる。
余談ではあるが、サムの着信音がゲーム「LAST NINJA」の音楽であることから、サムは相当のゲーマーである。
また終盤に差し掛かる頃に、数々のヒットチャート楽曲を制作する演奏家が登場する。
NIRVANAのフロントマンである「カート・コバーン」が大好きな主人公サムであるが、NIRVANAの有名楽曲である「Smells like teenspirits」をも彼が作ったとして、これにショックを受ける姿も描かれる。
そしてサムは、「カート・コバーン」のようなパフォーマンスで演奏家を撲殺している…。
物語では「カルト教団」のような宗教が流行っているが、これは実際のハリウッドでも流行った時期があったらしい。
そして「地上で暮らす者」=「仏教の涅槃」=「NIRVANA(涅槃)」との伏線にもなっているとも考えられる。
暗号に関しても、それ以外の演出に関しても、ここまでは「氷山の一角」であり、まだまだ数々の伏線演出が組み込まれている。
物語のまとめとタイトル回収。
サムの暗号解読物語。
その真実は「サラは富裕層が選んだ女性」であり、彼らは「上昇(死亡)するまでシェルターで過ごすこと」を決めた思想を持つ人々であった。
主人公のサムはこの真実を知ったことによって殺されそうになるが、「危険ではない」との判断によりこれを逃れるというオチだ。
タイトルの「アンダー・ザ・シルバーレイク」であるが、シルバーレイク基、世界の富裕層の闇を「シルバーレイクの地下」として投影させたものなのだ。
(ここでも「地上」と「地下」が「境界線」であるとも考えられる。)
この物語はそれを知るまでのサムと、「知ったが気にせず生きていく」と決めたサムを描く物語で、ここまでの脚本を知って初めて本作を「理解した」と言えるだろう。
そんな、一見ダークな脚本が、明るくコミカルに描かれる演出こそが、本作の真骨頂だったのだ。
鑑賞者の皆さんの中には知らない人も居るかもしれない。
本映画のジャンルは「サスペンスコメディ」だったのだ…。