本記事は、映画「マッドストーカー」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。
鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。
マッドストーカー -監禁地獄-
2019年、ジム・ドノヴァン監督によって制作された作品。
1980年に実際に起こった事件を元に作られたドキュメンタリー映画。
上映時間は87分。
あらすじ
舞台はアメリカ、1980年。
キリシタンであるメアリーの一家はアメリカの裏側に位置するフィリピンへと布教の旅に出ようとしていた。
出発の日まで秒読みとなったある日…メアリーと長女のベスが何者かに拉致されてしまう…。
出演役者
本映画の主人公メアリーを演じるのが、「アリソン・ハニガン」
アメリカでは有名な女優であり、2012年ほどまでは精力的に作品に出演していた。
メアリーと共に監禁される娘、ベスを演じるのが「ダフネ・ホスキンズ」
アメリカの子役であり、ホラードラマシリーズとなる「ザ・ボーイ」などに出演している。
本作の元凶、ミンを演じるのが「ハウイー・レイ」
アメリカ国籍であるが、アジア系の俳優。
笑顔が素敵な青年であるが、本作ではそのサイコパスな笑みに注目。
ネタバレ感想と考察
まさかの実話!?そして名前までも…!?
物語の最後で実際の写真が流れることから、本作が「実話」であることに衝撃を受けた鑑賞者も多いだろう。
物語は序盤から、メアリーの語りによっての「ドキュメンタリー方式」で物語は進展していくことからも、これは読み取れる。
本作で描かれた事件の内容についてであるが、実はアメリカで1980年に起こった事件であること以外は情報を得ることができなかった。
アメリカでの拉致監禁事件の件数は異常に多く、そんな残虐な事件の多さに埋もれてしまっている印象は否めない。
そんなことからも「どこからどこまでか本当だったのか?」という内容に関しては言及することはできないが、映画内での登場人物である「メアリー」「ベス」、そして「ミン」などの名前は実際の名前であるようだ。
そしてもちろん、「ジェイソン」の存在も本当である。
事件現場に居合わせただけで殺されてしまったジェイソンが誰よりも可哀想な作品に映ってしまった…。
また、映画の主人公であった「メアリー・スタウファー」は宣教師としても有名な人物で、今現在でもメディアに時折顔を見せている。
数々の事件の中でもライトな部類…!?
「拉致監禁の生存率2%」
これはアメリカの拉致監禁事件の生存率をリアルに数値化したものである。
昔から現在まで、数々の拉致監禁事件が「映画化」され世に放たれているが、そんな事件の中でも本作品はとてもライトなイメージを覚える事件だろう。(これを聞いて衝撃を受ける人も多いかも…。)
今回の映画の事件では53日間にも及ぶ監禁期間の中で親子の脱出劇が展開されていく映画であるが、ラストは無事に脱走し、警察署内で家族と再開、抱擁する「トゥルーエンド」の終わりとなっている。
映画の配給会社は「LifeTime」という会社であるが、実はこの「LifeTime」、似たような映画作品を多数取り扱っているのだ。
例えばこちら「ガール・イン・ザ・ボックス」、こちらも拉致監禁を描いた事件であり、拉致された女性はなんと7年間もの監禁生活を強いられた。
そしてこちら「ガール・イン・ザ・ベースメント」、こちらはなんと24年間もの期間を、父親によって自宅の地下室に監禁された事件となっている。
もちろんこの2作品共に実話であり、「LifeTime」の配給である。
これらの作品を鑑賞してきた人々は、今作「マッドストーカー」には少々物足りなさを感じてしまう人も居るだろう…。
事実、事件の内容としてはかなり重いものであり、「完全なる奴隷」として扱われたり、「実の父親」からレイプされたりと、目を瞑りたくもなってしまう…。
また、「ドキュメンタリー方式」という映画構成に着目するのであれば、「エリザベス〜狂気のオカルティズム〜」という拉致監禁作品も「ドキュメンタリー」として描かれ、こちらはなんと映画の作中に事件の被害者となった女性自らインタビューに応じている。
今回の作品は比較的ショックが少なく鑑賞しやすい作品なので、これを機にアメリカの拉致監禁事件についてもう一歩踏み込んだ情報を仕入れてみてはいかがだろうか?
その時こそ、貴方は本当の意味で「戦慄」するだろう…。
「宗教」の強さを感じる作品。
これまで描かれた拉致監禁に関する映画や、それの元となる事件と、今回の事件の差別化を測るのであれば、間違いなく「宗教」は挙がってくる要素だろう。
本作の主人公であり被害者となったメアリーは、生粋のキリシタンであり、家族で国外への布教活動を行うほどの人物だった。
53日間もの間クローゼットに閉じ込められた彼女達であるが、二人居たことによって耐えられたことも理由として挙げられるが、彼女の芯に宗教があったことも生きる道へ繋がった要素だった。
「彼女の語り」によって進む物語は、その要所要所で聖書の言葉が引用される描写があることからもこれは読み取れる。
また、脱出後もそんな宗教に救われた旨の発言もあり、なんと彼女はこの監禁事件さえも「神の与えた試練」だと昇華してしまっているのも驚きだ。
「無神論者」の多い日本では、共感できる人も決して多くはなく、驚きを覚えた人もいるのではないだろうか?
また「宗教」と「拉致監禁」の結びつきはなぜか多い。
前述した「ガール・イン・ザ・ボックス」でもキリシタンの女性が拉致監禁に加担したり、別の作品「エリザベス〜狂気のオカルティズム〜」に至っては、犯人自身が「自分を神だと信じ込んだキ〇ガイ」として描かれるほどである…。
事件の犯人像達…。
実は今回の事件、これまでに映画化された事件の中でも、比較的新しい時期の事件として挙げられる。
時代は1980年であり、被害者家族はもちろん、犯人もしっかりと生きている。
ちなみにそんな犯人、刑期は「終身刑」であるが、2016年に「仮釈放」の申請を出しているようだが、一体どんな文句で「仮釈放」を謳ったのか気になるところではある…。(結果はもちろん却下となった。)
また過去の拉致監禁事件ではまさに「お笑い」のような刑期が突きつけられたパターンも存在している。
「ガール・イン・ザ・ボックス」で描かれる「キャメロン・フッカー事件」であるが、その犯人キャメロンはなんと懲役135年を言い渡されている事例もある。
まさに「事実は小説よりも奇なり」の言葉が似合う事件だろう。