本記事は、映画「悪の教典」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。
鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。
悪の教典
2012年、三池崇史監督により制作されたサイコホラー作品。
原作となるのは小説家「貴志祐介」の同名小説で、数々の賞も受賞した作品である。
高校のクラス担任が生徒たちを次々に虐殺していく作品。
上映時間は128分。
あらすじ
舞台は東京、私立晨光学院高校。
学校内では、イジメや集団カンニング、モンスターペアレントや淫行教師など、数々の問題がひしめき合っていた。
そんな2年4組の担任である「蓮実 聖司」は、校内でも生徒から絶大な人気を誇り、「ハスミン」と呼ばれ、生徒から慕われていた。
そんな中、蓮実の裏の顔を探る者もいた…。
出演役者
今作の主役である蓮実 聖司を演じるのが、「伊藤英明」
蓮実のクラス、2-4の生徒の一人片桐 怜花を演じる「二階堂ふみ」
同じくクラスのメンバーである安原 美彌を演じる「水野絵梨奈」
クラスの番長として君臨する蓼沼 将大を演じるのが、「KENTA」、ちなみに彼はダルビッシュ有の弟である。
同学校の教師であり、隣のクラスの担任でもある釣井 正信を演じるのが「吹越満」
配信コンテンツ
「悪の教典」は今現在、Amazonプライム、NETFLIX、Hulu、等で配信されている。
ネタバレあらすじ
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- 舞台は東京、私立晨光学院高校、学校内では、イジメや集団カンニング、モンスターペアレントや淫行教師など、数々の問題がひしめき合っていた。そんな2年4組の担任である「蓮実 聖司」は、校内でも生徒から絶大な人気を誇り、「ハスミン」と呼ばれ、生徒から慕われていた。
ある日クラスで「集団カンニング」のウワサが流れる。
蓮実率いる2-4ではないものの、学校全体で「授業中は携帯電話を没収する」という取り組みに出るのだった。
首謀していたのは隣のクラスの「早水 圭介」だったが、級友であった2-4の「夏越 雄一郎」と「片桐 怜花」はそれを知っていたのだった。
その後も学校内でモンスターペアレントや淫行教師など、数々の問題が起きる。
その最中、淫行教師の手からクラスの「安原 美彌」を救った蓮実は、隠れて安原と肉体関係を持つようになる。
そんなある日、モンスターペアレントの父を持つ「清田 梨奈」の家が全焼する。
父は死んでしまうが、放火に及んだのは、他でもない蓮実だった。
その後、蓮実は立て続けにクラスの番長であった「蓼沼 将大」を、誰にもバレないように殺害する。
蓮実の周りでの死亡、失踪があまりにも多いと踏んだ、隣のクラスの担任「釣井 正信」は独自の調査で蓮実の犯人説にたどり着くも、会話を盗聴器で蓮実に聞かれ、殺害される。
また、その会話相手が、集団カンニングを首謀した早水であったが、早水も拷問を受け、殺害されてしまう。
とある晩、蓮実と安原が一緒にいたが、安原に蓼沼殺害の証拠となりうる携帯電話が見つかってしまい、安原殺害の計画を立てる蓮実であった。
翌日、文化祭の準備のため、徹夜で作業に励むことが許可された校内で、安原が自殺に見せかけ殺害される。
その後、蓮実はクラスの全員を殺害するために、ショットガンを持ち出し、校内を徘徊し始める。
校内に火を放ち、数々の生徒を大虐殺していく中で、アーチェリー部である高木が応戦するも、ショットガンには勝てずあえなく殺害される。
校内の全員を殺したと判断した蓮実は、自身で頭を打ちつけ、「被害者」を演じるも、機転の良さで片桐と夏越が逃げ延びていた。
死亡した高木が呼んでいた警察が到着するも、AED装置の録音がきっかけとなり、蓮実は殺人容疑で逮捕される。
鼻歌を歌いながら、爽やかな笑顔でパトカーに向かう蓮実だった。
ネタバレ感想と考察
「爽快感さえ感じる、虐殺サイコパス作品」
今作の映画は、学園モノ、そして主演が「伊藤英明」ということもあり、設定とキャスティングだけを見るととても爽やかな映画に見えなくもない。
しかし、実際に見始めてみると、その期待は気持ちいいほどに裏切られることとなる。冒頭から問題やパニックばかりの学園が展開され、それはいつしか血で染まっていくだろう。
サイコ映画のファンであれば、「待ってました!」と叫ぶような作品だろう。
ここまでやられると逆に爽快
この手のサイコパスモノ映画の大抵が、いわゆる「メインキャラ」が生き残るような脚本になっているが、今作に至っては、メインキャラのほとんどは死亡する結末となる。
映画の前半までで、アーチェリーが得意な生徒や、東大を目指す生徒、美術に長ける同性愛嗜好を持つ生徒など、各生徒の「個性」を引き出すような仕掛けになっている今作だが、そんな「モブ」としての立ち位置ではない、「死亡フラグ」が無くなったようなキャラクターが、一瞬で次々と殺されていく構成となるのだ。
物語の構成における「常識的設定」をここまでぶち破られると、爽快感すら覚えてくる。
「バトルロワイヤル」を思い出すようなサバイバル感
今作の「アクション感」、そして、「学園モノ」という設定やキャラクターの個性から「バトルロワイヤル」を思い出した人も多いのではないだろうか?
こんな設定以外にも、今作には、他のサバイバル映画と通じている点が存在している。
今作の映画は120分という長編でありながら、後半の1時間が全て虐殺シーンに当てられる。
まるで「サバイバル映画」のようなその時間配分は、まさに血生臭いアクション映画を観たような気分となる。
伊藤英明のギャップとミュージカルのような演出
今作の虐殺を繰り返す主役であるのは、他でもない伊藤英明であるが、今作を鑑賞して、彼の演技力には、とてつもなく衝撃を受けた。
元々のキャラクターイメージが頭に残っていることも大きいが、時折見せるその爽やかな笑顔が、非常に無邪気に見える。
2012年当時の彼の印象で言えば、まだ「海猿」が強かったように思うが、その当時のイメージならば、今よりも衝撃的なギャップだっただろう。
彼の熱血漢溢れる容姿、そして声のトーン、表情、仕草までも、全てが「サイコパス」とは程遠い存在となり、そのギャップこそが、より「サイコパスっぽい」と感じさせるようにもできている。
また今作では時々ミュージカルのようなシーンが展開される。
サイコパス故の見える世界がコミカルに描かれ、そんな数々のシーンが逆に狂気を駆り立てていた。
個性あふれるキャラクター達にも魅力がある。
物語を通して鑑賞してみると、「個性」がより鮮明に引き出されたキャラクターが皆死亡していることに気が付くであろう。
逆の言い方をすれば、確実に生き残った二人はしっかりした設定がありながらも「個性」というものが描かれることが無く、「どことなく主人公なんだろうな…」程度の情報しかなかった。
前半では、先生よりもサイコパス感を帯びていた、早水の拷問や、見るからに怪しい無線部の教諭、釣井の真相究明など、個性があるからこその衝撃的な展開が今作には多かったのだ。
「もしかしたら彼なら止めてくれるかも…」と、期待させてしまうようなキャラクター性を誰もが持っていて、虐殺シーンも冷や汗をかきながら、見進めてしまう。(それでもショットガンには勝てるはずもないが…)
ちなみに今作の釣井先生を演じた役者「吹越満」は、今作に負けないほどの日本屈指のサイコパス映画「冷たい熱帯魚」に主演として出演しているので、こちらも是非とも観てほしい作品だ。