TENET(テネット)
2020年、クリストファー・ノーラン監督により、制作された作品。
物語のテーマは「時間逆行」
上映時間は151分。
あらすじ
特殊部隊に所属する一人の男が居た。
テロを防ぐために、オペラハウスにて任務を遂行する男だったが、「弾丸の不思議な軌道」によって、敵に拘束されてしまう。
おぞましい尋問が行われ自殺薬を服用するが、ベッドの上で目が覚めるのだった。
「名も無き男」は、「時間逆行」に翻弄されるまま、世界滅亡の危機と対峙する戦争に巻き込まれていくこととなる…。
出演役者
本作の主人公、名前が明かされない「名もなき男」を演じるのが「ジョン・デヴィット・ワシントン」
主人公の相方、「ニール」を演じるのが「ロバート・パティンソン」
本作のヒロイン「キャット」を演じるのが「エリザベス・デビッキ」
世界を壊そうと目論む武器商人、「セイター」を演じるのが「ケネス・ブラナー」
配信コンテンツ
「TENET(テネット)」は今現在、Amazonプライム、等で配信されている。
ネタバレ感想と考察
今までの「時間」をテーマとした作品とは一味違う作品だった。
突然だが、皆さんは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」という映画を観たことがあるだろうか?
かの「ロバート・ゼメキス」の名画としても名高い作品の一つであるが、「時間」をテーマとして掲げる映画作品として、まず頭に浮かぶのはこの作品だろう。
この「BTF」を初めとして、「タイムマシン」や「能力」によって過去と未来を行き来する作品は数多く存在し、本作の「テネット」も、例外なく「時間」がテーマとなる作品となっていただろう。
しかしこの「テネット」、これまでに描かれた時間をテーマとした映画作品とは、少し違う世界観で物語が展開されることとなる。
それが映画の「巻き戻し」という世界観だった。
過去や未来を行き来する上で、本作のキャラクター達「時間の逆再生」が行われる中、アクションが繰り広げられる。
車は後ろに向かって走り、
鳥は後ろに向かって飛び、
弾丸は、弾痕から通常の勢いで、銃口に向かって弾道を描くこととなる。
そんな「時間逆行」を利用した物語の構成や伏線回収こそが、本作の一番の見どころであり、他の「タイムトラベルモノ」では描かれなかった作風となる所以だった。
そもそも「テネット」とは?
本作のタイトル「テネット」、作中にもあらゆるシーンで出てくる単語ではあるが、その真意は、主人公の属する「組織の名前」である。
映画では大々的に語られることが無かったのではないだろうか?
辞書によると「TENET」は「信条、主義、原則」という意味であることが記されていた。
この「TENET」という単語が「回分(前から読んでも後から読んでも同じ)」であることが関係していることは間違いないだろう。
このテネットの回分、実は、事実史に基づき存在する、世界最古と言われるラテン語の回分がモデルとなっている。
この回分、「TENET」以外にも、「SATOR」「AREPO」「OPERA」「ROTAS」とも読み解くことができるが、
「SATOR(セイター)」や「OPERA(オペラ)」など、この回分に関係したワードが、この映画では登場することとなる。
「TENET」という言葉の持つ意味や、映画のセリフの一つ一つがもたらす意味も、「アストラル界」と呼ばれる「精神活動」や「霊媒、心霊」といった、オカルト要素に切り込むような内容となっている。
本作の内容は想像通り、壮大で難解なスケールの作品である。
なぜ時間が「逆行」できるのか?
時間の逆行を行う秘密組織「テネット」は、武器商人の「セイター」による、自身の死後に起こる「世界滅亡」を食い止めるために、過去や未来を行き来し、「逆行」の世界を走り回る。
それでは、自己中心にもほどがある、セイターの傍若無人ぶりはとりあえず置いておいて、どんな原理で「時間逆行」が行われているのだろうか?
今作で登場する「時間逆行装置」が今作の重要なアイテムとなっているようであるが、この装置の部品となる、「9つのパーツ」がキモとなっているだろう。
ちなみに、9つのパーツの最後の一つである、「241」を追い求めるのが今回の物語の大筋となっている。
この「時間逆行装置」のパーツとなるものは未来の科学者によって開発され、過去に送られてきたという設定となっていた。
また時間逆行装置の重要な関連用語として「アルゴリズム」という単語が出てくる。
このアルゴリズム、簡潔に述べると時間逆行の「手順」という内容である。
今作で主人公が追い求める、パーツこそがこの逆行の「アルゴリズム」という内容なのである。
また、パーツに関して、「プルトニウム」という単語が出てくるが、前述した「BTF」のタイムマシン、「デロリアン」でも「プルトニウム」をガソリンとし、タイムトラベルを行っていたことが共通している。
今作における「逆行」の技術については正直、理解が及んでいない部分が多いが、徐々に紐解いていくこととしよう。
「逆行」を利用した伏線回収
時間の巻き戻しを利用した伏線回収が多く成された今作、車が逆走し、弾痕から銃口に弾が戻ったりしていたが、一番印象的だった「逆行シーン」は「赤と青の部屋」だろう。
本作における「逆行」を魅せる最初のシーンであり、これにより、少しずつ鑑賞者の理解が進んでいくこととなる。
赤の部屋は「順行」
青の部屋が「逆行」である。
「テネット」のメンバーは順行している赤のチームと逆行している青のチームに分かれ、それぞれの時間軸からの「挟撃作戦」を行う設定であり(この辺で既に頭がパンク寸前)、映画の前半で繰り広げられたアクションを、後半の「逆行」でどんどん回収していく作風であった。
襲われた謎の人物がまさかの「自分」であったり、音声の逆再生(逆行時に普通に聞こえる)であったり、ニールが「未来の自分」に雇われた人物であったり…。
また、リュックにストラップを付けた死体が蘇り、自身の命を救ってくれたシーンがあり、そのリュックを背負ったニールが描かれる描写もなかなか印象的だった。
そして、最終的には「TENET」の創設者は自分自身であるというオチ。
まるで「T-800」を過去の自分に送り込んだ、ジョン・コナーのようである。
おわりに
まだまだ理解には時間がかかる鑑賞者も多い為、これから2度目、3度目と鑑賞する人も多いだろう。
ノーラン監督作品ならではの「スルメ要素」、これを楽しみつつ、今後も「TENET」を楽しんでいきたいと思う。
今作の「テネット」を描いたクリストファー・ノーラン監督は、他にも「インセプション」や「インターステラー」を描いたことでも、有名な監督となった。