「アンテベラム」ネタバレ感想と考察【根本から覆る大どんでん返し映画!?】

  • 2023年6月17日
  • 映画
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本記事は、映画「アンテベラム」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。

鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。

「アンテベラム」

2020年、ジェラルド・ブッシュ、クリストファー・レンツ両監督によるスリラー映画。

制作にはあの「ゲット・アウト」「アス」などを手がけたショーン・マッキトリックなどが参加している。

上映時間は106分。

あらすじ

舞台はアメリカ、南北戦争の最中、綿花農場で奴隷として多くの黒人が働いていた。

そこでは「白人の主人たちに話しかけられない限り、黒人奴隷は言葉を発してはならない」というルールがあり、白人によって殺される黒人も多数存在していた。

そんなある日、「脱走を企てた」として一人の黒人女性エデンが背中に焼印を押される…。

出演役者

本作の主人公、エデンを演じるのが「ジャネール・モネイ」

 

途中から農場に来る黒人女性、ジュリアを演じるのが「キアシー・クレモンズ」

 

配信コンテンツ

「アンテベラム」は今現在、Amazonプライム、U-NEXT、等で配信されている。

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ネタバレ感想と考察

あの「ゲット・アウト」の製作者が作る黒人の世界観!

本作を初めて知ってパッケージを見た時、ほとんどの映画ファンが思うだろう。

「ジョーダン・ピール監督の新作か…」

実は筆者自身、鑑賞する直前までピール監督の作品だと思っていた。

それもそのはず、物語はピール監督特有の「黒人キャスト」がメインとなる世界観。

そして「人種差別」もしっかりと描かれているからだ。

2017年「ゲット・アウト」でも2019年「アス」も、黒人のキャラクターに「人種差別」というプロットが浮き彫りとなる世界観だった。

しかし蓋を開けてみると、なんと本作にピール監督は関与していなかった。

それらの作品の制作に携わった「ショーン・マッキトリック」が参加する作品となっていたわけだ。

ピール監督の作品でないのなら…と、あまり期待しなかった人々も多いだろうが、実際に鑑賞してみると、ピール監督を匂わす伏線やどんでん返しがある映画だったので、期待充分となっていただろう。

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あの映画を思わせる…脅威の大どんでん返し!!

物語の構成やプロットについてぶっちゃけた評価をしてみると、正直言うと「前半は全て仕込み」である。

その全てが後半に向けた伏線の作品と言ってもいいだろう。

どこかで見たような手法…とお思いの鑑賞者の方は非常に鋭い。

そう、これは1998年「トゥルーマン・ショー」とかなり似た手法に感じた。

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本作の結果としては「過去の話」を連想させるように鑑賞者を騙し、それが現代で繰り広げられている…という予想もできない結果となった。

そしてトゥルーマン・ショーでも映画の前半部分全てを「仕込み」に当てて、後半で伏線を回収していく物語だった。

本作もあのトゥルーマン・ショー級のどんでん返しが展開される作品となっているが、その「バラし方」というのが非常にあざとい。

物語は「南北戦争時代」から始まり「現代」へと移り変わり、また「南北戦争」へと戻る。

そして最後の南北戦争で「スマートフォン」がいきなり登場する。

南北戦争の奴隷として働いていた「エデン」が、目を覚ますと人権活動家の「ヴェロニカ」となる。

100人中100人が「エデンの子孫だろう…」という展開になるのは間違いない。

こんな「時代の転換タイミング」と、「一人二役のトリック」によって、本作のどんでん返しは演出されているのだ。

ピール監督の作品と言えば、類まれなる大量の伏線が名物となるが、彼が居ないこの作品でも、面白い伏線はもちろんたくさん存在していた。




映画タイトルの謎と伏線とは?

意外と言うべきか、やはりと言うべきか、ピール監督が居ない本作でも数々の伏線が存在していた。

それらを一挙に解説してみようと思う。

・タイトル「アンテベラム」は南北戦争直後の時代の呼び方。

「テ」の部分が反転しているのは、過去から現代へ、時間が逆行して物語が進んでいるから。

・冒頭のウィリアム・フォクナーの「過去は決して死なない。過ぎ去りさえしないのだ。」という言葉は「過去のように見せて現代だったこと」への伏線。

・パッケージやタトゥー、ヴェロニカの著書にも刻印される「蝶々」は、中国の「胡蝶の夢」という言葉から来ている。

これは「現実か夢かわからない状況」を示す言葉。

・エリザベスの娘が「黒人人形を紐で括り引きずっている描写」があるが、これはラスト、エリザベス自身を引きずることへの伏線。

・エデンが背中に入れられた烙印は「BD」で、これは「ブレイク・デントン」という政治家の名前。

デントンは選挙活動に勤しんでおり、エデンを幽閉していたマザーズ上院議員はデントンの部下。

・マザーズ上院議員の「我々は無数にいる」というセリフは、デントンを含めた「黒人差別主義者」のことを指している。

・奴隷として拉致されたばかりのジュリアは酷く動揺しているが、これは現代で「南北戦争ごっこ」が行われていることへの驚き。

・ジュリアがエデンに「あなたを知っている。あなただけがここを抜け出す唯一の希望なの!」と言い放つが、これは「人権活動家」としての一面を持つヴェロニカへの言葉。

・エデンの変な歩き方は「床が軋む音」を立てないため。そして活動家の時のホットヨガの動作も役に立っている。

まさに「鑑賞者のみ」を騙しに来るのがこの手の映画の面白いところだろう。

この作品の演出方法は「トゥルーマン・ショー」「ユージュアル・サスペンス」にも匹敵するほどのどんでん返しだと、筆者は思っている。

二度目三度目の鑑賞も楽しませてくれそうだ。

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